リレーコラムについて

「生みだす」を考える。(後編)

鶴香奈子

正直言って、 そのときのことは、 あまり覚えていない。

かろうじて思い出せるのは、

噴き出す羊水と、

顔も手足もくしゃくしゃのエイリアンがいたことと、

じいちゃん(※院長)が私の股の間からVサインで
母の構えるカメラに応じていたこと。

視覚的な記憶だけ。

痛みといった「感覚」の記憶は、すっぽり抜け落ちていた。

その後、助産師さんが手慣れた様子で
処理したエイリアンを私の腕にしっかりと抱かせた。

これはもしかして、私の赤ちゃんなのかな・・・?

やっと実感が湧いてきたころ、
じいちゃん(※院長)は私の無防備な下半身に容赦なく処置を施した。

・・・痛っっっ  てぇえぇぇ〜〜〜!!!!!!!

後陣痛と胎盤の処置、会陰縫合の為の麻酔、
じいちゃん(※院長)はとても引退間際とは思えないほど手際よい。
(ただしメチャメチャ痛い)

しかしエイリアンを抱かされている私は
当然暴れたり逃げたりすることはできず、
むしろ勝手に泣き叫ぶその物体を勢いで落っことしてしまわんよう
ぐっとこらえるしかなかった。

いま考えると、あれは作戦だったのだと思う。

子どもに注射をするときに、
風車などの玩具で気を引かせる行為に似ている。

–深夜2:15 破水、
  早朝5:05 出産。

こうして、私の初産は3時間足らずで終わった。

仕事にしろ赤ん坊にしろ、
何かを生みだすという行為は本当に素晴らしいことなのだと思う。

そのためなら、自分がどんなにつらい思いをしてもかまわない。
それどころか、つらい思いをできることが幸せにさえ思えてくる。

そんな純粋さが、そこにはある。

あのときのエイリアンは、
安らかな寝顔で今日もそばにいてくれている。

だから、朝が毎日、待ち遠しい。

     〜本日の育児日記〜
      (生後18日め)

   5:00 おっぱい
   8:00 うんち おしっこ おっぱい
  10:40 おっぱい
  11:50 おふろ
  12:20 うんち おしっこ おっぱい
  16:00 おしっこ おっぱい
  19:00 うんち おしっこ おっぱい
  21:30 うんち おしっこ おっぱい
   1:20 おっぱい

NO
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