リレーコラムについて

熊とりんごとブルーベリー

山口慶子

今日は、氷河で火山が噴火したそうです。
アラスカにロケに行った時のことを思い出しました。

アラスカの氷河は、白い氷の中に青く発光しているような
神秘的な色をしていました。
そんな氷河がよく見える小高い丘にヘリコプターで着陸。
降りて、撮影アングルを探していたところ、
青白い氷河の上にスイカの種のような黒い点が見えました。

そのスイカの種は、気のせいか大きくなってきて、
足が生えているのがわかりました。

一緒にいたカメラマンが、私に英語で叫びました。
「何かポケットに食べ物を持っているか!」と
私は・・・持っていたのです。小さいりんごを。

足の生えたスイカの種は、熊でした。
熊が突進してくる丘の反対側は、断崖で動けません。

カメラマンとふたり、必死にもうひとつの丘の上に
エンジンを止めて休んでいるパイロットに向かい、
「エンジンをかけて!」と叫び続けました。

少し離れているせいか、言葉が届かないようで、
飛び跳ねながら両手を振っていたためか、
楽しく手を振っていると勘違いされ、
手を振り替えしてきたのには、ビックリ。

そうしている間にも、熊はどんどん向かってきます。

そこからは、言葉をジェスチャーに変えて、伝わることを
願いながら飛び跳ねていました。
パイロットは、ハッと気づき、熊の毛並みが見えるところ
まで来た瞬間にヘリのエンジンをスタート。

熊は驚き、逃げていきました。
間一髪、命拾いした忘れられない瞬間でした。

言葉って、届かないと無力ですね。

でも、本当に伝えたいことがあって、届かせることが
できれば、一番速く、割と正確に伝えることができる
ものと改めて思いましたが。

ところで、熊はブルーベリーを食べに一面ブルーベリーが
生えている場所によくくるそうです。
アラスカのブルーベリーはとってもおいしくて、
撮影の前に現地の人に採ってきてと、お願いしたくなる程でした。
バケツいっぱいに採って来てくれて、食べきれない分は冷凍して
部屋の冷凍庫一杯に詰め込んでいました。

ところが、うっかり帰りに失念。
成田で思い出して騒ぐという、私は間抜けなディレクター
でもありました。

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