リレーコラムについて

80歳と鳩

山口慶子

今朝、ニューヨークに住んでいる80歳になる
ミュージシャンと電話で会話をしました。
今年の秋に中国で行なうコンサートのためです。

アメリカに住むミュージシャンの気持ちを、中国の
人たちに届ける。それはとてもチャレンジングなこと
ですが、記憶に残る仕事がまたひとつ増えると思うと、
苦労も吹き飛びます。

今日は、4月5月のスケジュールを確認したのですが、
80歳と思えないハードスケジュール。
アメリカ国内を常に移動しながら毎日精力的に演奏を
こなしているだけでなく、イタリアやクロアチアまで
音楽を届けるという信じられないスケジュールが次々
電話の向こうから聞こえてきました。

今朝、少し寒くて部屋の中でほかほかカーペットに
うずくまりながら聞いていた私は、
この人生の大先輩の気力と貪欲に未来を夢見る力に
圧倒されました。

私は80歳でこんなに生き生きとしていられるだろうか
と電話の後、洗濯機の洗濯物がくるくる回っている
のを見ながら考えてしまいました。

音楽は、奏でる人の命そのものが、メッセージとなって
聴いている人の心に届くもの。
80歳のミュージシャンだけでなく、今までコンサートの
お仕事でお話をさせていただいてきたミュージシャンの方々
からも同じことを感じたのを、改めて思い出した瞬間でした。

世界では大地震や気候変動が起き、ネガティブな気分が
蔓延しているようですが、命がある限り、未来は
絶対になくならない。

干していた洗濯物に糞をした鳩に、「怒怒!ポッポー!」と
鳩語で注意しながら、狭いベランダで未来に思いを馳せている、
私は間抜けなゼネラルプロデューサーでもあります。

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