リレーコラムについて

ドラマとエイリアン

山口慶子

むかしむかし、学生のころ、大学の先輩がアルバイトを
代わりにやって欲しいと頼んできました。
それは、テレビ番組でのクイズ問題作成のお仕事。
とりあえず、言われたところに行って、放送作家さんたちに
混じって問題をつくっていました。

大学の図書館で、昼休みとか授業が終わったあとに
いろんな本を読み、様々な角度から問題を作り続け、
放送作家さんと並ぶくらいの採用数になりました。

そうこうしているうちに、当時の総合司会だった
Fさんから、クイズ番組だけでなく、女子駅伝の番組も
覗いてみないかと言われ、その番組のアルバイトも
掛け持つことになりました。
Fさんからは、「ラストの一番感動的な、3分ほどの俺が読む
コメントを作ってみて。」と言われ、「感動的なコメント」って
何なのかさっぱりわからないまま、取り組ませてもらいました。

今から思えば、そのときが私のコピーライターとしての
原点で、クリエーターとしての出発点だったんですね。

Fさんからも番組プロデューサーからも同じことを言われました。

「すべての物事には、必ずドラマがある。そのドラマを掴め。
掴んだらそれを伝えるんだ。ドラマ番組だけがドラマじゃない。」

当時、女子駅伝の番組なのに、一人ひとりのランナーの私生活を
取材しつづけ、テーマ曲もつくり、番組キャラクターも
設定していました。何よりスタッフしか目にしない台本の表紙が
わたせせいぞうさんのイラストでしたから、その制作チームの
「今までにない感動をスポーツで見つけて伝えたい」という思いが
溢れていました。

大学在学中、このアルバイトだけでなく、コピーというものを書いて
応募すると雑誌にのせてもらえる。という話を聞き、
試しに送ってみたものがありました。
いきなり採用になって雑誌に出たときには、
「才能があるかもしれない。」と単純に思い込んで、今に至ります。

選んでくれたのは、仲畑さんと岩崎さんでした。
銀の熊トロフィーをいただいた時には言い出せなかったのですが。

こうして学生アルバイトの出会いで得た開拓スピリットは、
私の仕事のすべてのベースとなっています。
もちろん、常に失敗ばかりで迷惑をかけながらですが・・・。

「Be ambitious!」な新事業開発を行なう今の私のお仕事にも
つながっているかと。
尊敬するスティーブ・ジョブズ氏が「Be Foolish!」と
スタンフォードの学生たちに講演をしていたことも
間抜けな私には、ささやかな勇気の素になっています。

そんな、間抜けで常識がないことが、かえっていい結果を生むと
信じたいのですけれど。ね。
どこかにエイリアンがいると信じるようなものかもしれませんが。

では、また、いつか会える日を楽しみに。
次は、私の大切な友人である兼崎智子さんにリレーします。
ともちゃん、受けてくれるといいのですが・・・。

NO
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