リレーコラムについて

相当な違和感。

八百朗

僕が就職してまだ間もない頃。
学生のときやっていたDJの名残がまだ抜けていなくて、
渋谷のCISCOかなんかにレコードを見に向かってたと思う。
スクランブル交差点。信号待ち。
109からの道の信号が変われば、僕は真っ直ぐに歩き出せる。
そんな時、明治通りの方からひときわ大きな声を上げ、
あのクルマが近づいてきた。

街宣車だ。

ヘッドホンの中のバスドラの隙間をついて聞こえてくる、
あの独特の割れてノイジーな声。
あれ?
でも、なんか、この声、テクノのリズムと意外と合ってる?
すごく魂を入れて歌っているような感じすらする。
へ〜っ。なんか発見。この組み合わせ〜。
でも絶対企画にはできないか・・
なんて呑気に仕事のことを思ってたとき、
ちょうど曲の間奏の部分だったんだと思うんだけど、
その車が僕の前で突然スローダウンしたかと思ったら、
あのノイジーな声ではっきりとこう言った。

「おら〜!!!そこの八百 朗〜〜!
 聞いてんのか〜!!」

「!!!!!」

今、今、今、ぼぼぼぼくのこと言いました〜?
言いましたよね〜!? え〜〜〜〜〜っ!?
ななななななんで、ぼくのこと しっててるの〜?
パニック!パニック!パーーニック!

助手席のドアを開け、降りてくる男。サングラス姿。
僕にむかって近づいてくる。
どうしよう、僕、今、天国に一番近い島にいるんじゃないかな・・。

「八百さん! ここで何してるんすか?」

そう言いながらサングラスを取った男は、後輩のNだった。
九州からでてきたやつで、すごくまじめな大学生だったはずで、
たまに会うとすごく元気にあいさつとかしてくれるラグビーやっていた
好青年だったと思ってたんだけど。どうしちゃったわけ?俺の方が聞きたいよ。
ききき、きみこそ、そこで何しちゃってるの?

「バイトっす!」

えっ?バイト?そういうのってバイトとかあんの?初めて知ったんですけど。
だってフロムAとかで見たことないけど、ちょっと右よりの人募集!とか。

「バイト先の人にどうしても来いって言われて、断れなくって〜!」

えっ、断れないって、君はMなのSなのどっちなの?
複雑すぎるんですけど。

「また、飲みにつれてってくださいよ〜、お願いしますよ〜! じゃ!」

じゃっ・・って。取り残された俺・・。刺さるような周囲の視線。
そのすべてに気づかないふりをして
おもむろにヘッドフォンをセットし、自分の世界へと入る僕。
圧倒的な孤独感・・。いつもの曲が、今はせつなく聞こえた・・。

「意外性」とか「インパクト」とか言われるとき、
僕はこんなシーンを思い出す。
極端すぎて絶対わかってもらえないけど・・。

NO
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