リレーコラムについて

細かすぎて伝わらない「仮説」

小野麻利江

どれだけ成長できているかは疑わしいのですが、
コピーライター1年目の私は、本当にダメダメでした。

「自分が面白いと思うものは、みんないいと思うはず」という考えに
無意識のうちに、とりつかれていました。

だから当然、自分のコピーや企画が、通るはずもなく。

「新人賞に応募する作品がそろわない」という事実に直面したことで、
今までのやりかたを全部否定し、一から勉強し直すことにしました。

「自分の考えは、他人に分かってもらえない」と仮定して。
自分という基準を、いったん無視して。

「本当のことって、何だろう」
「人に良い結果をもたらすアイデアやコピーって、何だろう」
そう考えるようになってから、
ようやく少しずつ、周りのスタッフに伝わる案が出せるようになりました。

・・・といった具合に
ありきたりな「いい話」を書いてしまいましたが、

今でもひとりブレストしていると、
明らかに自分だけにしか面白くないネタ、
日ごろ人間観察をする中で発見した「仮説」のようなネタが、
あいかわらずいっぱい出てきます。

これはさすがに伝わらないよなあ、と思って
自分でボツにするけれども、

たちの悪いことに、
そういう「アイデアの残りかす」みたいなネタを、
ひそかに愛していたりします。

このようなコラムでもないと、
これから先、私の頭の外から出ることもないと思うので、
今日はいくつか、紹介させてください。

———————————————

■ブログなどに1人称を書く時、
「私」でも「わたし」でもなく
わざわざ「あたし」としている女性は、
自分のことが大好きか、
あるいは意地でも大好きになろうとしている。

■サスペンダーをしている成人男性は、神経質。

■「ひとりで部屋にいる時は、はだか」と言ってる人は、
誰かが部屋にいたとしても、ドアを開けたままトイレする。

■「この人の髪形、床屋でやってもらったぽいな」
と思う人は、ほぼ床屋。

■女性の下着メーカーの紙袋を、
そうと知らずに持ち歩いている風の男性が、たまにいる。
そういう人はきまってスーツ姿で、
しかもスーツの肩が、きまってブカブカ。

■電車の中でヒステリックな大声で話している女性は、
女子高生か、
そうでなければ、髪形が20年くらい古い。
(ただし、東京都内限定)

■劇団●季のファンに、
荒れた生活をおくっていそうな人はいない。

■携帯電話の着信音が大きい人は、
 くしゃみの音も、ばかでかい。

■全世界の「イケメン」と呼ばれるたぐいの人は、
私に対する興味がない。
(・・・って、これは仮説というか、実感でした)

———————————————

・・・こんな感じです。
いかがでしょうか。細かすぎますよね。

とはいえ、忘れるのもなんかもったいなくて、
いまだに記憶の片隅にこびりついている「仮説」たち。

いつか誰かと、こういった話を、
ささやかに議論できたらうれしいです。

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