リレーコラムについて

世界はそれを、無謀と呼ぶんだぜ。

平石洋介

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  この話は、
  現在日本で広告クリエーティブの仕事をしていて、
  英語がロクに話せなくて気が小さい人にとっては、
  もしかしたら参考になるかもしれない、100%実話である。
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その朝は、
いつもより早くアパートのエントランスを出た。

目の前を行き交うのはニューヨーカー。
だって、ここは、ニューヨーク。

毎朝思うが、まるで映画の1シーンのようで、
自分がその中にいるのが信じられない。

でも今朝は、もっと映画的だ。

目の前に、黒光りするリムジンが1台とまっている。
そして僕は、当たり前のようにドアを開ける。

マトリクスのエージェントスミスのような
黒グラサンと黒コートの運転手。
彼に「グッモニング」と声をかけ、革張りのシートに身を沈めた。

NYの喧噪の中、リムジンが静かに走り出す。
http://twitpic.com/2o2p7j

ハドソン川を越え、マンハッタンが背後に遠くなる。
徹夜の目に朝日がまぶしい。

うとうとする間もなく、空港に着いた。
ドライバーにチップを渡す。 
“Thanks.” 英検3級でも、それくらいは言える。

チェックインカウンターには、
米国の広告クリエーティブ業界の重鎮、Mr.Bが待っていた。

今年のクリエーティブ・エージェンシー・オブ・ザ・イヤーに輝いた
M&B社の創始者にして、最高クリエーティブ責任者だ。

彼を筆頭に、合計5人のアメリカ人と日本人が揃った。

これから、メリーランド州にある某グローバル企業の本社に乗り込み、
グローバルブランドCIのプレゼンを行なうのだ。

飛行機は、アメリカでは当たり前の30分遅れで飛びたった。
機内で眠ろうと思うが、かすかな緊張感が勝ってしまう。
空と翼を見る。http://twitpic.com/2o3cya

プレゼンは苦手だが、あまり緊張はしない。
(社内で案を出す時の方が「つまらん」と言われそうで怖い。)
サイトの集客力が世界で7番目という超グローバル企業であっても、
そんなの関係ねえ。

でも今回は、東京の精鋭スタッフと不眠不休でつくった企画案を、
徹夜明けの日本人(英検3級)がプレゼンするのだ。
まったく緊張しないとしたら、かなりの大物か、かなりの無責任だ。

空港に着陸、急いで迎えのリムジンに乗り込む。
http://twitpic.com/2o3gjo
30分走ると、某グローバル企業の本社がドーンと現れた。

飛行機は遅れたが、プレゼン開始時間は遅れない。
あと15分。作戦を立てる暇もない。

会議室に駆け込むと、
急いでプレゼンボードを設置する。

間髪入れず、クライアントが現れた。
ダースベーダーのテーマが頭の中で鳴り響く。

クライアントは全員女性、6人。
こっちは全員男性、5人。

「GO-CONならこっちが1人足りないね。ha ha ha!」
なんて冗談が言えたら、かなりの大物か、かなり頭がおかしい。

一番目つきが鋭く、ガタイもデカイ女は、取締役だそうだ。
腕を組んで、見慣れぬ日本人(英検3級)をにらみつけている。

あまりの緊迫に現実感を失いそうになる。
まるで映画の1シーンのようだなあ、アハ、アハハハ!(脳内)

プレゼンがはじまった。
これは、現実だ。

続く。

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