リレーコラムについて

世界はそれを、奇跡と呼ぶんだぜ。

平石洋介

〜前回の続き〜

その時のことは、
はっきりとは覚えていない。

ここで失敗したら、
東京のスタッフの不眠不休の努力が、泡of水。

でも英語力のなさは、
情熱やパッションでどうなるものでもないし、
自信過剰の欧米人みたいにペラペラとプレゼンすることは、最初から無理。

とにかく、思いつく単語を、1つ1つ、
文章じゃなくてもいいから、言うしかない。

前に立つ。22の瞳が見つめる中、
全力で落ちついてるふりをして、ビジュアル案の説明を始めた。
(○○は、クライアントの名前。)

 「このデザインに。
  3つの意味。

  1つ目、太陽と月。
  いつも、地球のどこかで。
  太陽は輝く。 月は照らす。

  ○○は、そこにある。

  それは、昼と夜。
  彼らは、生きる。○○と一緒に。
  自分らしく。

  2つ目、関係。
  ○○と、人々。つながっている。

  3つ目、融合。
  世界中の○○が、1つになる。

  このデザインを見る。
  その時、この物語、その想いを。
  いつも。
  すべての人々が、感じる。」

…アマゾネス軍団、完全に沈黙。

それはそうだろう。
小学1年生でも、もっと上手に話すだろう。

沈黙が息苦しい。営業にフォローを求める、涙目の私。

やがてS女史が、口を開いた。

 「とても、とても素敵な物語だわ。」(直訳)

常に意見がバラバラのアマゾネス軍団も、
これについては激しく同意する。
「ラブリ〜」 「エレガ〜ント」 みたいな。

ポツポツな語りが、ポエムな語りに思えたようです。

その後、延々と2時間は続いたディスカッションでも
何度となくこの「太陽と月のポエム」が話題にでました。

いいものをつくれば、
誰が言おうと、どう言おうと、幼稚園レベルで言おうと、
相手に伝わるんですね。

僕らの仕事の原点を見た思いです。
東京のスタッフのみんな、本当にリアリーにありがとう。

帰りの飛行機からまた、外を見る。

広がる夜景のアメリカよ、ああアメリカよ。
昨日の今頃は、まだプレゼンの準備をしていたね。

東京のスタッフの頑張りを、台無しにしなくてホント良かった。
もうすぐ帰るよ、NYのアパートに。 そして寝よう。

結果なんてもう、気にしないさ。

でも結果は? 知りたいですか?

NO
年月日
名前
5719 2024.07.12 吉兼啓介 短くても大丈夫
5718 2024.07.11 吉兼啓介 オールド・シネマ・パラダイス
5717 2024.07.10 吉兼啓介 チーウン・タイシー
5716 2024.07.09 吉兼啓介 吉兼睦子は静かに暮らしたい
5715 2024.07.08 吉兼啓介 いや、キャビンだよ!
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