否定の肯定
キスシーンが書けないと気づいたわたし。
この感覚は、前にも経験がある・・・。
10年前にコピーライターという名刺を持った時、わたしは喜びました。
「これでコピーライターになった!」
ところがどっこいてやんでいべらんめい。
原稿用紙を前にしたら、ちっともコピーなんて書けなかったのです。
どうにか100本書いて先輩に見てもらっても、
「ちゃんと人に伝わるコピー」になっているものは1本もない。
同じお題で書いている先輩との差に愕然する。先輩もわたしのコピーに驚愕する。
いかに自分が書けないかを、目の当たりにしました。
たいして高くもないわたしの鼻は、折られるどころかえぐられました。
「わたしはコピーライターです!」なんて恥ずかし過ぎて、口が裂けても言えない状態。
「自分は何もできない。書けない。
ほとんどの人は、そこに気づくまではできる。
一度は否定した自分を、ふたたび肯定できるまで、
努力し続けられるかは、お前次第だ」
その時先輩にそう言われたのが幸いでした。
あれから10年経ってようやく、
「コピーライターの尾形です」
と、最近、少しずつ、名乗れるように・・・。
自戒の念も込めつつですが。
しかしながら、初小説! 初恋愛小説!
この分野でも、いかに自分が書けないかを、目の当たりにすることに。
「自分を否定できる」ところまでは、一足飛びに辿り着きました。
そのあたりは、さすがの経験者でございます。
そして、「こりゃあかんわ」と思いました。
否定した自分を、局部的にでも肯定できるまで、
とてもじゃないけど辿り着かない・・・。
容赦なく迫る締め切り! 迫る発売日!
小説の中で、
主人公がすったもんだする前に、
わたしばかりがすったもんだする日が続きます。
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