リレーコラムについて

駅伝

渡辺悦男

塚田由佳さんからリレーのタスキを渡されて、
慌てて走り出そうにも、足がもつれそうな渡辺です。
11年ぶりのリレーです。
1週間走りきれるか心配ですが、
最後までお付き合いください。

今年の正月、いつもの年と同じように、
テレビで箱根駅伝を観ていた。
今年は早稲田、東洋、駒沢と下馬評でも激戦が伝えられていて、
出雲大学駅伝と伊勢の全日本大学駅伝もテレビ中継を観た。
さらには今シーズンの駅伝という駅伝はほとんど観た。
駅伝は冬のスポーツである。
野球をはじめとする多くのスポーツがオフシーズンとなるなかで、
駅伝とラグビーはこの季節の大きな楽しみだ。

駅伝、なかでも箱根駅伝は正月のスポーツの華。
2日はスタートからテレビの前にかじりついた。
往路5時間半、ずっとテレビにくぎづけ。
駅伝の面白さは1区ごとにランナーが交代して順位が変動するところ。
だから5時間半、目が離せない。
コーヒーを飲み、煙草を吸い、雑煮を食べ、煎茶をすすりながら、ずっと観ている。
往路の白眉は最終5区。箱根の山登り。
3位でスタートした「山の神」東洋・柏原君が追い上げ、1位でゴール。
しかし早稲田も粘って、27秒差でゴール。

これで翌日の復路も目が離せなくなった。
翌3日も朝からテレビにかじりつく。
山下り6区は、東洋と早稲田のデッドヒート。早稲田が逆転。
この2校が他校を寄せつけない。
残りの18チームの順位も変動している。
ここでふと思ったのだ。
駅伝を観に行こう。

家からの距離と時間を考えて、鶴見中継所に行くことにした。
調べてみると、鶴見中継所は京浜急行・鶴見市場駅から近い。
電車を乗り継ぎ、目的地へ。
駅を降りると、人がざわざわと歩いている。
老若男女、というか高齢者が多い。
カメラや双眼鏡を手にしているおばあちゃんも多い。
この感じ、何かに似ている。
そうだ、高尾山。

国道1号沿いにズラッと並んだ人垣のなかに割りこむ。
隣のおばあちゃんに話しかけられる。
この人も駅伝観戦のベテランのようで、いろいろ教えてくれる。
ワンセグを観ている人も多いので、どの辺を走っているかわかるが、
ヘリコプターが近づいてきて、ランナーの接近がわかる。
白バイが先陣を切り、いよいよトップランナーが通り過ぎる。
速っ!
読売新聞の小旗を振り、声援を送っている自分に驚く。
ランナーが目の前を通り過ぎるたびに、同じことを繰り返す。
繰り上げスタートでタスキを受け取れなかった最後のランナーが来たときには、
ひときわ大きな声援が飛ぶ。
ああ、これはスポーツの演歌なんだな、と思った。

日本で生まれ、100年近い歴史をもつ駅伝。
EKIDENとして世界にも認知されてきたこのスポーツは、
相撲がもはや国技とも言えなくなったなかでは、
もっとも日本人の心情に訴える競技なのではないだろうか。
もし近いものがあるとすれば、夏の甲子園で、
斎藤佑樹君に対する高齢女性層の人気を見ると、そう思う。
もっともこれは演歌ではなくて昔の東宝映画か。

鶴見で箱根駅伝を観た帰りの電車で、
また隣の席のおばあちゃんに話しかけられた。
この日はおばあちゃんに声をかけられる一日だった。
その人は川崎大師に初詣に行った帰りだという。
毎年駅伝を観に行くおばあちゃんも一年の初めのお参り。
ああ、箱根駅伝は初詣とも似ているなあ、
とそのとき思ったのだった。

渡辺悦男の過去のコラム一覧

2893 2011.01.28 監督
2892 2011.01.27 鉄路の旅
2890 2011.01.26 続・万年筆
2889 2011.01.25 万年筆
2888 2011.01.24 駅伝
NO
年月日
名前
5805 2024.11.22 中川英明 エキセントリック師匠
5804 2024.11.21 中川英明 いいんですか、やなせ先生
5803 2024.11.20 中川英明 わたしのオムツを替えないで
5802 2024.11.19 中川英明 ドンセンパンチの破壊力
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