リレーコラムについて

続・リーダー論、ではありません。

阿部祐樹

   ・・・・・・。

とはいえここまできて逃げるわけにいかず
意を決してドアをあけると
揃いの特攻服を着た人たち
がいっせいにこちらを振り返ります。

いちばん奥にすわるスキンヘッドの男性が
こちらを、ものすごい眼光でみつめています。

呑固唾。「た、高尾ですが・・」

その途端、男性は、はっと目を開き
「あー、これはこれは、高尾さん。
 わざわざすみません、お気遣いいただいて。
 まったくいろいろな人がいますからねー」と
ものすごい物腰柔らかい、あの電話の声。

「もしよかったら黙らせてあげますよ」
そばにいたパンチパーマの190センチくらいの
若い社員の方が特攻服の袖をまくりながら続きます。

「我慢してると図に乗りますよ、そういう輩は」
その横にいたずんぐりした社員の方も
特攻服に身を包み、腕組みをしたまま話に乗ってきます。

そして結局、その環境やその制服や髪型はどうあれ、
クニーの社員たちに高尾さんは
とても親身に相談に乗ってもらったそうです。
結局、マンションの住人たちのあまり出入りのない、
朝の11時くらいに迅速に配達してもらう、
というお願いをして帰宅しました。

そして配達当日のその時間。
あきらかに大きなクルマの到着音。
しばらくすると、
聞き覚えのある女性の金切り声が聞こえてきます。

「あ、あなたたちは、
 こ、ここで何をなさってるんですかーーーーーっ」

いろんな想像が脳裏を駆け巡り
高尾さんはつっかけのまま玄関を飛び出します。

まず目に飛び込んだのは、
玄関前の、閑静な住宅街に、
それはそれは存在感あふれる「街宣車」。
そして、眩しい「國威」の文字・・・

その横で金切り声をあげるあの、おばさん。

そして、全く表情を変えずに荷物を下ろし
搬入の用意をしている190センチパンチと
ずんぐりパンチ。どちらももちろん特攻服。
かれらが搬入しようとしているものは
どこからどうみても「兵器」にしかみえない。
そこに割って入った高尾さん。

「ちがうんです。ちがうんです。
 これはただの、ベ、ベン・・」

そう言いかけた瞬間、190センチパンチが
股間の縮みあがるような声で
おばさんにむかって吠えました。

「おまえかぁーっ!
 高尾さんに言いがかりつけてんのは、こらぁっ!」

おばさんも高尾さんも、縮みあがる。

「高尾さんちの、白いご飯の上に、
 おまえんちからチン○の毛がおちてきて、
 気色悪うてたまらんのやっ、
 高尾さんはっっ!この、どあほっ!」

その後はスローモーションのようだったと
高尾さんは僕に言いました。

おばさんは息をのみながら「チ、チ、チ・・」といいながら
自分の部屋にかけこみます(HS2倍)。

何事かと集まった住人たちの間を抜けながら
堂々と「兵器」を高尾CDの部屋に
搬入していく特攻服の男たち(HS3倍)。

静まり返った新築のマンションに
男たちの声が響き渡ります。

「ありがとうございましたっ、
 またのご利用をお待ちしていますっ」

・・・・・・・

もう僕ときたら、この話をかれこれ10年以上、
間が持たない打ち合わせとかで誰かに話してます。
(あ、もちろん高尾CD的にコトがおさまった後ですよ)

そうとう事実とは変わっちゃって
この10年の間に僕が都合よく脚色してる
ところも多いと思うんです。

でも当時、高尾CDに相談されたときは
ほんとにおもしろかった。
本人も半ばやけくそでおもしろがってたし。
下手な連続海外ドラマより目が離せなかった。
(正確には「耳が離せない」だけど)

高尾CDは、僕の忘れられないリーダーの一人です。
(なんちゅう締め方だ・・・)

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