目を覚ませ
眠い。
大地震いらい
ずうっと働いている。
つぎからつぎへと
伝えなくちゃいけないことや
考えなくちゃいけないことがやってくる。
なにか言いたいけれど
なんて言ったらいいのか
わからないでみんな迷っている。
非常事態で言葉の受け取られかたが
変わってしまったみたいで
安心させるための言葉が怒らせたり
重要な言葉が流されたりして
古臭いと嗤われていた言葉の出番だけが増えている。
この言い方で被災地の人たちが傷つかないか
僕らは安全地帯で必死にチェックをつづける。
本当の答はどこにもない。
仕事が終わり節電中の闇の中で
「空車」の文字をつかまえる。
なんて確かな言葉なんだ「空車」って。
夜は、暗い。
明け方は、寒い。
この夏はきっと、暑い。
電気が足りなくなるほどに
言葉が当たり前になっていく気がする。
いいことだ。よね。
美味しいものには美味しいって言おう。
楽しいときには楽しいねって言おう。
怖いときには怖いって言おう。
たいせつな人にはたいせつって言おう。
もう、そうしよう。
とてつもない大惨事が起こると
そこにはやがて必ずといっていいほど
ユートピアみたいなコミュニティが生まれるんだって。
1906年のサンフランシスコ地震でも
2001年のニューヨークでも
2011年の東北でも。
言葉を交わしたことのない人どうしが
お互いを助け、語り合って、ぎこちなくも笑い合った。
たぶん人間の奥の奥の奥のほうには
こんな時に助け合うためだけの本能が眠っているんだ。
おい起きろ。寝るな本能。
君の出番だよ。