「頑張ろう」に溢れるこの国で
下東史明
ダイソーへ行った。
3年ぶりくらいだろうか、これも100円!というものが、
昔から多かったけれど、ますます増えている気がします。
いいことなんだろうか、悪いことなんだろうか、
僕には判断がつきませんが、
とにかくモノの値段はじわじわ下がっているように思います。
当たり前になったせいか、デフレという言葉を耳にするのも少なくなりました。
モノの値段が下がるにつれて、
モノをつくり、運び、売る人たちの価値まで下がっているのは、
僕には少し悲しいです。
コンピュータやマシンでできる仕事なら、速さ/正確さ/継続性において、
人は太刀打ちできません。
となると、残るのは機械にはできない仕事!となる訳ですが、
それが「人間らしい」仕事とも限りません。
この「人間らしさ」というのは「自分らしさ」とは全くの別物です。
コールセンターなどがいい例でしょうか。
「顔」が見えない者同士が匿名性の中で勧誘や苦情のやりとりを行っていて、
いつのまにか、そこにはトゲが芽を出してきます。
効率化、がすべての元凶(こんな言い回しをすると、なんだかよくないですね)
なのですが、その波はモノへはもちろん、すべての人へと押し寄せているように
思います。
電車の中のステッカーには「使える人になろうぜ!」的な惹句が溢れかえり、
「優秀」と言われる人でさえ、自分が「使えない人」になる不安を常に抱えている
ような気がする。
とはいえ、逆に、
効率化のよい面や、「がんばれば報われる」ことを疑い、あきらめたとき、
それはそれで、薄っぺらい「寂しさ」が漂ってくる。
それを振り払おうと、仕事をさらに増やし、頻繁にツイートし、
アルコールで頭や心を長時間麻痺させる。
自分の痛みに鈍感にならないと、生きにくい時代のようです。
こんな、薄っぺらい寂しさは、夏の蚊のように、
追い払おうとすればするほど、まとわりついてきて、
手を大きく左右に動かしているのに、知らない間に、首もとで血を吸われている。
それならいっそ、手も顔も動かさずにこらえてみれば、
いつか、蚊も飽きて、どこかへ飛び去ってしまうのでしょうか。
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