コーチング
どんな仕事でもそうですが、
広告関係者もその立場において二つに分かれます。
会社に所属しているか、フリーランスかです。
私は前者ですから、会社の動きに翻弄されます。
しかも現在は、コピーライターというより、プロデューサーです。
クリエイティブの出来ばえを大いに気にしつつも
金勘定を間違えず、なんとか予算内に収める(努力をする)ことも重要な仕事。
とはいえコピーライターあがりの悲しさです。
費用の目測をあやまり、社内でコテンパンにたたかれることもしばしばです。
出世からはとうの昔に遠ざけられ、
会社員である限り「地位とは収入なのだ」とようやく気づいてから、
人の昇進にともなうその年収をうらやむ卑屈な男になりさがってしまいました。
出世など関係ないと胸を張っていた昔が嘘のようです。
そこで数年前、テニスのコーチングを学び始めました。
会社員としてではなく、フリーランスな自分自身の成長を促そう。
そんなはつらつとした野心が胸に芽生えたからです。
もともとテニスは会社員になってから始めたものです。
会社のテニス部にも所属していましたが、夏合宿の宴会目当てのダメダメ部員。
子どもが生まれてから、親として何か教えられるようになりたいと思い立ち、
やっとこ地元のスポーツクラブで週に1回、テニスを習い始めたのが十数年前。
それらの経験だけを頼りに、テニスコーチへの無謀なチャレンジです。
(ちなみに通っていたスポーツクラブは震災で閉鎖。再開の目途はたっていません)
コーチングのためには、まず何より基本技術の習得です。
それまでさまざまな人に教わった、改築、増築、対処療法的な技術を
すべて投げ捨て、これはと見込んだひとりのコーチにぴったりしがみついて
基本技術をゼロから教わりました。
コーチとしては技術指導をしただけのはずですが、
私の飢えたやせ犬の目は、その指導方法までも逃さず記憶しようとしていました。
日本体育協会のテニス講習会やスポーツプログラマー講習会にも参加しました。
同時に、会社のマーケッターがドラッガーの「マネジメント」を読むように、
テニスの技術書やスポーツ指導書、プレイヤーの自伝をがつがつと読み漁りました。
たどりついた指導書の名著が、前楽天監督 野村克也氏の一連の著作です。
どの本にも似たようなエピソードが散りばめてあり、
自慢話かと思える部分も多くてやや食傷気味になります。
それでもどれにも唸りをあげるような高度な指導の極意が明らかにされています。
野球を語って、野球の世界を超えている。名著とはそういうものです。
技術論のさきにある、指導を受ける側の人間形成を見据えているところが
ほかのスポーツ解説書との大きな差です。
会社員としては仕事の重圧にうめくしがない一介のサラリーマン。
しかし、Yシャツを脱ぎ棄て、いったんラケットを握ったら
愛と情熱と鋭い眼光をそなえたスポーツコーチャー。
これが残りのサラリーマン人生をかけた、私の理想の到達点です。
どうです、広告業界を目指すみなさん。
フリーランスには腕一本の厳しさが。
会社にもぐり込んだとしても出世という茨(いばら)の道があるのです。
どちらにしてもよき指導者、よきコーチに出会えることを願ってやみません。
かなわなかったときは、あなたがあなた自身のコーチになってみてはいかがでしょう。
(次回はお名残り惜しくも最終回。おたのしみに!)
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