リレーコラムについて

隠されたテクニック

水本晋平

みなさん、ごきげんよう。
編集室ではいかがお過ごしですか?

というのも、
企画術や、企画書術や、プレゼン術は、
研修や講義も盛んだし、
たくさん書籍にもなっていますが、
編集室での過ごし方って
ちゃんとが習うことないな、と。

電通でもそれについて、
講義されているのは
あんまり聞いたことがありません。

比較論で言うと、企画をがんばる方が
よっぽど大事だからしょうがないのですが、
最後のクオリティーにダイレクトに直結するわりに、
意外とブラックボックスなんですよね。

CMプランナーや
CDの編集室での心構えや、
映像の点数の上げ方は
かなり属人的でみんなそれぞれの
流儀を持っていそう。
でもあんまり話されていない。

だからこそ
いろんな人の考えをまとめて、
聞いてみたくなります。
誰か1冊の本としてくれないかなぁ。

あの編集室のふかふかすぎるソファで
偉大なCD / CMプランナーたちは
何を感じ、何を気にして、オフラインを見つめるのか。

題して、
『ソファーの上のCMプランナー』

編集ソフトの使い方などの編集テクニックではなく、
広告クリエイティブの
編集室での心構えに特化した、
日本ではじめてCM編集の裏側にをまとめた本です。

1億総動画クリエイター時代だし、
結構需要あるんじゃないかなと思います。
YouTubeやTikTokの動画を
客観的に面白くするのにもきっと使えるし。

ということで、宣伝会議さん、どうですか!
僕は買いますので。

残念ながら、
まだその本がないので
僕はいろんなCDの先輩方と仕事させてもらう時に
編集室で、どんなふうに伝えて、
どういうふうによくしていくんだろう、
という編集室の所作を、わりと注目して見てしまいます。
本当に人によって癖があるのも面白いです。

編集室での伝説のエピソードとかも
まとめてみたいですよね。

僕が目撃した編集室での
先輩の所作で言うと、

7年ほど前に澤本さんと
初めてご一緒した作業での
オフラインクリエイティブチェックの時に、

「とてもいいと思います。
4つだけクライアントが
気にされそうなことがありまして。」

と4つのポイントを指摘され
監督とその4点の対応策の検証をした上で、
クライアントチェックを迎えたら、

オフラインを見たクライアントさんが
ものの見事にその4点をそのまま指摘して。

これが澤本さんか・・・と痺れました。

 

その本の、最後の方の章には、
「無邪気な発言」という項目も欲しいですね。

ちゃぶ台ひっくり返す、
とまではいかないけど、
ちょっと根本的なところで
気になっちゃった時に、

CDや、CMプランナーは、
編集室でどれくらい
無邪気に発言しているのか。

クオリティーを上げるために、
本音で思ったことを
どれだけ飲み込まずに発言しているのか。

ということを読んでみたいな、と。

僕自身、
若い頃は、シンプルに
こんなこと言うと
監督や先輩に
センスないなとと思われないかな…
みたいな可愛い躊躇だったのですが、

自分がCDなど責任ある立場になると
その発言が誰かの努力を無駄にしないかな
誰かに無理を強いることにならないかな
と思って飲み込みそうな時もありますし、

もっとダサく言うと、
でも、面白くないと思ったセリフ書いたの俺だしな…
でも、演出コンテ通りだもんな…
でも、これでクライアント通してるしな…
と自分の見え方を気にして
黙ってしまいそうな時もあります。

先人の知恵によって確立された
いろんな承認ステップを踏んで、
この場にたどり着いている「仕事」だからこそ、
今それ言う?みたいなことは
本来できる限り言うべきではない、とも思います。
たくさんの人に迷惑かけることの方が多いし。
限り言うべきではない、とも思います。

一方で、
実際に、先輩が無邪気な発言して
点数が上がっていく様を目の当たりにすると、
うぉぉぉって思うのも事実だったり。

そんな編集室での無邪気さの功罪について
語ってみるのも面白いんじゃないかなぁと。

監督目線の、
このクリエイターの試写はすごかった!
みたいな話もいっぱい読んでみたいですし、

エディターさん目線での
そりゃないぜ!と許せなかったエピソードとかも
聞いてみたいです。
(いつも本当にありがとうございます)

編集室での無邪気さでいうと、

一緒に仕事させてもらってる中では
S々木さんもピカイチです。

つい先日も、

夜も深くなった編集室で
目の前に置かれた紙コップの
ホットコーヒーをじっと見て、

そのコップのシルエットと、
絶妙に入った量の加減からなのか、

S々木さんが一言、

「なんかこれ、今朝、
健康診断で出した、検尿みたいです」

とおっしゃりました。

今からみんなも飲むものなのに…。

そんなことは意に介さない、
タブー知らずな無邪気セリフに
思わず爆笑してしまいました。

あの時は、
ただの笑い話だと思っていましたが、

もしかしたら、
編集室では無邪気に
思ったことをちゃんと
伝えるべきだ
ということを
教えてくださったのかもしれません。

こんなエピソードを
こんなに無邪気にコラムに
書いちゃっていいのかわからないので、
一応イニシャルトークにしておきました。

無邪気になるって、ムズカシイものです。

ということで、
編集室には
たくさんのエピソードが眠っているはず。

書籍化されたら、教えてください。
もうあるよ、と言う場合もこっそり教えてください。

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