リレーコラムについて

能力を劣化させる方法

富田克人

●●●

…だから、その「特殊な能力」をどうやって高いレベルに維持するか、
そのことに腐心する。

先に名前を挙げた方たちのふるまいをみていると共通点がある。
それは「やりたくないことは、やらない」ということである。
これは領域を問わず、先端的な研究者全員に共通している。

やりたくないことを我慢してやっていると、
「わからないはずのことが、わかる」という
その特殊な能力が劣化するからである。

どうしてだか知らないけれど、そうなのである。
だから、自分に負託された使命が切迫している人ほど
「特殊能力の維持」のために、
さまざまなパーソナルな工夫を凝らすようになる。

池上先生が水に潜ったり、三砂先生が着物を着たり、
池谷さんがワインとクラシックにこだわったり、茂木さんが旅したりするのは、
それぞれのしかたで「そうすると、自分の特殊な能力が上がる」
ことがわかっているからである。

別に趣味でなさっているわけではないのである。
「やりたくないことは、やらない」という厳しい自律のうちにある人たちは、
だから総じていつも上機嫌である。

上機嫌であることが知性のアクティヴィティを
向上させることを彼らは知っているから、
「決然として上機嫌」なのである。…

・特殊な能力について(「内田樹の研究室」から引用)
( http://blog.tatsuru.com/2011/01/20_1253.php )

●●●

「やりたくないことは、やらない」

なるほど、じゃあ好きなことだけやればいいのか。
やりたいことだけやればいいんだ。なんてステキな人生!

と思ったら早計。

「やりたくないことはやらない」というのは、
「やりたいことだけをやる」とイコールではなく、
「やりたくないこと以外ならやる」ということである。

「きゅうりが嫌い。豚足が嫌い。カレーライスが好き」な場合、
カレーライスばかり食ってりゃいいってことではなく、
きゅうりと豚足以外なら、おいしく食べられるようにするということ。

就職活動のOB訪問で「やりたいことが見つかりません」
という質問をよく受けるのですけれど、
そもそも「やりたいことを探そうとする行為」はあまり意味はなくて、
「やりたくないことを知っておく・自分のアレルギーを分かっておく」
ことだけで十分なのであると思う。

焼肉が好きだと決め付けて焼肉三昧の人生になるよりか、
そばアレルギーを自覚してそば以外のうまいもんを食べる人生のほうが
楽しい可能性が高い。

・・・

「やりたくないことを我慢してやっていると、
『わからないはずのことが、わかる』という
その特殊な能力が劣化するからである」

・・・

これは、「やりたくないことをやると、能力が劣化する」
という因果に見えてしまうが、
実際は「我慢してやると、能力が劣化する」だと思う。

僕が面白いと思う人はみんな、
専門外のことに楽しそうに取り組んでいる。

意気揚々と、思ってもみなかった異分野とコラボレーションしたりする。

彼らは、「やりたくないことやらない」というよりも
「やりたくない『やり方』でやらない」ようにしているだけなのだ。

ここで重要なのは、「我慢してやらない」ということである。

そして、その我慢している自分に気づける場所に行くために、
旅行をしたりジョギングをしたり、潜ったりする。
基本、一人になれる場所を持っておくということである。

特殊能力を得るためには、
歯を食いしばって修行するのではなく、
修行を楽しまなければならんのである。

ドラゴンボールの悟空のようにね。

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こんにちは。
博報堂の富田克人です。

もともとはコピーライター職であったのですが、
諸々の事情で現在は営業職です。
(希望したわけではありません)

異動後、まったく営業の経験がないなかで、
自身はどうやって営業の仕事にアプローチしていけばいいのか。

そう思い悩んでいたときに、内田樹氏のこの文章を読みました。

「我慢してはいけない。拒否してもいけない。楽しめるように工夫せよ」

僕は、そういうメッセージを受け取りました。
我慢は感性を麻痺させますね。

おかげでいまは楽しく仕事しています。

もっとコピーが書きたいけれどね。

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