リレーコラムについて

辞書

盛田真介

福岡の高校に通っていたぼくは
3年生になってから、
気が狂ったように受験勉強をしていました。

志望校は、神戸大学。
なぜその大学への進学を目指したかというと、
かつて父親が志望し、落ちた大学だからです。

当時のぼくにとって、父は大きな存在でした。
だからこそ、なにかで勝ちたい。
なにかで越えてやりたい、
という想いをもっていたのだと思います。

「神戸大学を受ける」。
そう伝えたとき、父はとても嬉しそうな表情をしました。
そして「ちょっと待っとけ」とぼくに告げると、
突然タンスをあさりはじめ、一冊の本を取り出しました。
英和辞典でした。

「これはな、お父さんが学生の頃つかってた辞書や。
これ、お前にやるわ」と父。

まぁ、辞書なんて、すでに持っています。
ただ、その心意気がうれしかったので、
「ありがとう」と言って、受け取りました。

そして父が部屋を去ってから
パラパラとめくってみました。

紙の変色具合からすると、
明らかに昔の辞書ではあるのですが、
しわもなく、何かを調べた形跡はゼロ。
ほとんど使っていなかったことがよーくわかります。

「こんなんやから、受験、落ちたんやろなぁ」
そんなことを思いながら、さらにめくってみました。

すると、あるページのある単語に
アンダーラインが引かれていました。

「SEX」でした。

神戸大学を卒業して8年半が経ちますが、
父には0.02mmも追いつけていないようなので
今日はこのへんで。

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