本棚より (1)
高校2年の、ある日。
ホームルームの時間に、
ひとりずつ宝物を発表することになった。
自分は、家から持ってきた
一冊の絵本を持って教壇の前に立った。
谷川俊太郎『ことばあそびうた』
かっぱ かっぱらった
かっぱ らっぱ かっぱらった
とって ちってた
爆笑。
退屈で淀みきっていた教室の空気は、
天才詩人の一行で一変した。
やんま にがした
ぐんまの とんま
さんまを やいて
あんまと たべた
調子に乗って、声はどんどん大きくなる。
はか かんだ
ばか はか かんだ
がった がた
友人たちは自分の手から宝物を奪い、
大声で読んではヒィヒィと笑いころげた。
小学生の頃、父親の本棚で出会った、
マイ・ファースト・俊太郎。
そして、奇才・瀬川康男の挿絵。
いまは、むすめとむすこの宝物になっている。
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