32、3歳からのTCCへの道 代理店篇
いつも水増しの過ぎるテキストですいません。
言葉を削ぎ落として端的に伝えるという基本的なスキルに欠ける細田です。なので極力CMプランナーと名乗るようにしています。
さて前回の続きです。だいたい12、3年前ぐらいに遡ります。割と記憶も確かになっていきますがぼやっとした表現の部分はお察しください。
私が入社後デスクを置いたのは、京都営業局という場所で、今では高そうなマンションになってしまいましたが御池通りの市役所近くに建つちょっと古いビルでした。こぢんまりとしていてこちらも今はなき堂島とはだいぶ規模が違います。その分コンパクトなのでクリエーティブ個人の裁量で動かせる仕事が多いのですが、まずもって裁量の範囲がわからない。
わからなさ加減で言うと、当時、私の中のアニメイトで話題だった「けいおん!」を使った企画を提案しようと思ったけど、どこにお願いしていいかわからないからとりあえずオープニングにのっていた会社の代表電話に「あーもしもし」とかけてみたぐらいのわからなさ加減です。ちゃんと聞いてくれてありがとうポニーキャニオンさん。
前回、広告は組織のビジネスとか書いたような気がしますがそれは今思う話であって、当時の私は、代理店というか広告のシステムもわからないので、まあ何をどうしたらどこがどうなって誰のクビが飛ぶかさっぱりわからないわけです。ピタゴラ装置が目の前にあるけど、どこを押したらいいかわからない。押していいかもわからない。そもそもピタゴラ装置かどうかもわからない。おとうさんスイッチを押したらなぜおとうさんが動き出すのかわからない恐怖。どう見ても現代の科学を超えているオーパーツへの恐怖です。TCCに応募するようないい感じのコピーを書くどころか、このピタゴラ構造を理解しないまでも、うっかり変なところを押して誰かと自分のクビをとばさないことが私の当面の課題になります。
こんな状況ではTCCとか数をそろえてエントリーするのも難しいわけです。大手広告代理店のクリエイターは全国規模の案件やってカンヌとりまくってるような気がしますが、まあ実際そういうのは近づいただけで5mぐらい吹き飛ばされそうなアベンジャーズがやっているのでホークアイですらないだたのキック・アスおじさんは営業さんや制作会社さんやクライアントさんの間をグルグルと京都市バスで回る日々を繰り返し、京都の地理と季節の風物詩に詳しくなっていきます。CMプランナーという肩書はありますがぜんぜんコンテ描かないし、スチール撮影もしないし、きちんとしたはみだしyouとぴあみたいなものを書いてます。大事な仕事なので私なりにはがんばってるしビジネス的にはそれで問題ないのかもしれませんがCMつくらないCMプランナーという肩書が居心地悪くもあり、仕事の合間に鴨川べりで猫の相手をしていると糺の森から「ええご身分どすなあ」と囁く幻聴が聞こえてくるほどです。
幸い、大阪で人手がいるぜー!みたいな時に京都にもお呼びがかかったりするので、京阪特急に乗って企画を持ち込んではボロボロ落とされていくルーチンを繰り返しつつ、たまにつくらせてもらったラジオCMを集めてTCCに課金だけは続けていきます。まあ結果はお察しですが自主制作の公募でなくなっただけましです。いや公募もしばらくしてたけども。
代理店に入ればTCCとかちょっと照れた顔してスープの冷めない距離で待ってるかなって思ってましたけど、実際は小惑星リュウグウかなってぐらい遠い。はやぶさ2だって6年で結果出しているのに結局もらったのは入社してから12年ですからね。アイアンマン始めた社長も2回も指パッチンおじさんと戦ってもう引退です。
広告のことは全部教わったし、楽しく仕事はさせてもらったし、こんなポンコツの面倒見てくれた方々には感謝でいっぱいですが、結局、私は在籍中はTCCに手が届かず、会社にたいしたご恩返しすることもできないまま、タイガータイガークリエイティブに移ることになります。
明日へ続きます。
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