リレーコラムについて

コピーライターのナンパ術

永友鎬載

同じ会社ではないが、
コピーライター仲間にナンパ師がふたりいる。

ひとりは40歳の先輩。もうひとりは29歳の後輩。
仮に先輩をAさん、後輩をBくんと呼ぶ。

Aさんは先輩とは思えないくらいとても若々しい。
いわゆる「奇跡の40歳」である。
エバーノートに女の子の情報をメモって
攻略法を練るセス・グライシンガーのようなタイプ。

Bくんは長身イケメン。一見ワイルドだが
マメな性格で異常にモテる。
世の草食系男子の天敵である。
ナンパでは細かいことは考えず、
本能のまま行動する坂本勇人タイプ。

以前聞かせてもらった話だが、
彼らはナンパ師のオフ会にも足を運ぶらしい。
屈指のナンパ師が安居酒屋に集い、
そこでいろいろな情報交換をしたり、
実際に路上に出てお互いのナンパテクニックを
見せつけあったりするそうだ。

ちなみにナンパ師には得意とする主戦場があるようで、
路上やクラブ、学園祭、海、駅前、駅のホームや電車の中、
居酒屋や喫茶店など(の店員に声をかける)が挙げられるが、
Bくんはそのすべてを得意としていて、
ナンパ師のオフ会でネ申とあがめられているらしい。

ある夜、彼らのナンパテクニックを見る機会があった。
ストナンを披露してくれるというのである。
※「ストナン」とはナンパ師の専門用語で路上ナンパ、
つまりストリートナンパのことを意味する。

ナンパの第一声は、キャッチコピーである。
どう声をかけるのか。よくテレビドラマなどで見るのは
「いま何やってるの?これからお茶しませんか?」という
ベタベタなものだが、はたしてAさん、Bくんはどうか。

Aさんは新宿東口のヤマダ電機付近の路上で
女子大生風の3人組に狙いを定め、
斜め後ろから彼女たちを追った。
僕もあとについて行きその様子を見学した。

Aさん「こんばんわんこそば!」
女子大生「えっ・・・」

おいおいAさん、それはスベるだろうと思っていたら、続きがあった。

Aさん「何杯食べれる?」(そばを食べる手振りをしながら)
女子大生「ふふっ」

ここからトークをふくらませ、
僕の目の前で3人からバンゲしていた。
※ナンパ師の専門用語でケータイ番号ゲットのことを
「バンゲ」というらしい。たとえば3人から
バンゲすると「3バンゲ」という風に活用する。
ちなみにBくんはGW中の一日で16バンゲを実現。

かたやBくんである。ナンパ師たちから
ナンパのカリスマと称される彼は、
一体どういう風に声をかけるのだろう。

彼は歌舞伎町付近でひとりのOLに狙いを定め、こう切りだした。

「こんばんは。ナンパです」

ちょ、直球すぎる……。
しかし、回りくどくなくていいのかもしれない。
意外性があって、一瞬心に隙ができる。

そこから普通にトークを盛り上げ、
BくんはOLと飲み屋に入っていった。
さすがナンパのネ申である。

話は少し飛んで、6月に結婚する友達がいる。
嫁となる彼女はもともとBくんにナンパされたのがきっかけで、
後日バーベキューで僕の友達と出会った。
Bくんはふたりをつないだのである。

彼女に聞いたことがある。
Bくんにどうやって声をかけられたの?と。

一昨年の年末、家に帰っている途中、
「ナンパです。これから飲み行かない?」と声をかけられ、
何度も断ったそうなのだが、Bくんはここであきらめず、

「今年一番の大勝負なんだ!」

と言ったそうである。
彼女は「今年一番の大勝負なら仕方ない」と思い、
そのままいっしょに飲みに行ったそうな。

ナンパとはいえ、言葉の力を感じざるを得ない。

そんなBくんは、TCC会員ではない。
才能と情熱があふれる彼は近い将来、新人賞をとり、
とてつもない名作をつくるに違いない。

最後までお粗末なコラムにお付き合いいただき、
ありがとうございました。

来週は同じ局の武重浩介くんにバトンを渡します。
今年のアドフェストで銀賞をとった男です。
ここで書ける内容じゃないかもしれないけど、
彼の「土下座」の話や「非常階段」の話は
何回聞いても腹を抱えて笑ってしまいます。
では、武重くん、来週よろしくお願いします。

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