リレーコラムについて

かき揚げ丼と海外赴任

武重浩介

武重浩介33歳です。

自分の経歴はコピーライターには珍しいかもしれないので
簡単に自己紹介させていただきます。

僕は入社後6年間営業してました。
そのうち半分は海外で働いていました。

入社3年目(正確に言うと2年4ヶ月)での海外赴任だったのですが、
当時は電通創業以来、最年少での海外赴任者でした。

なんて言うと大仰に聞こえますが実際は、
当時の局長にいきなり声をかけていただいたんです。

「昼飯でもどうだ」

2年目社員と局長との関係なんて、足軽と殿様みたいなものです。
2つ返事でタクシーに乗り込みました。

タクシーが停まったのは築地の小料理屋の前。
中に入るとおすすめのかき揚げ丼とビールを注文。

局長と1対1の昼飯で緊張する2年目社員。
ビールが進みます。酔います。
局長がビールを注ぎます。恐縮して飲みます。酔います。

かき揚げ丼が運ばれてきたときにはもう、
かき揚げの具がなんなのか。
帆立が入っているのかどうなのか。
そんな重要なことさえ、どうでもいい状態でした。

その後の会話はよく覚えていません。
かすかに覚えている会話の断片は、

「台湾って知ってるか?…結婚の予定はあるのか?…小籠包ってうまいよな…」

みたいな今思うと重要なキーワードが会話の端々に散りばめられていました。
この昼飯をきっかけにトントン拍子で人事が進み海外赴任が実現したのです。

もちろん、最終的には自分で希望して行きました。
昨年頂いたTCC新人賞のコピーも、
海外で体験したことがベースになっています。

そんなきっかけを与えてくれた当時の局長、
かき揚げ丼には本当に感謝しています。

ありきたりな言葉ですが、ピンチはチャンス。
負荷が大きければ大きいほど、リターンも大きいんですよね。
いまつらい人は、きっと大きなチャンスを掴みかかっていると思います。

かき揚げ丼を食べるたびにそんなことを思い出します。

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