リレーコラムについて

飛行夢家

西橋裕三

 ボクはわりと空を飛ぶ夢を見ます。
 博学なヒトにいわせるとそれは欲求不満のあらわれ
 だそうですが、いいんじゃないでしょうか。
 それに夢を見るのはタダなんだし。
 (これはいつか聞いた妻のセリフ)

 空を飛ぶのにはいくつかパターンがあります。
 
 まず、垂直飛行。
 これは鉄腕アトムのようにゆっくりと垂直に上昇しながら
 上空500メートルくらいに達するまであたりの風景が
 パースをかえつつひろがっていくのを楽しみます。
 それが火の見やぐらの見える大江戸八百八町だったり
 ブリューゲルのバベルの塔が見えているのに実は多摩川の
 河川敷だったりします。ちなみにボクくらいの「飛行夢家」
 になると「これは夢だな。もうちょっと飛んでみよう」とか
 「きょうはこのへんでやめとこう」ということはよくあること
 です。

 次に歩飛行。
 これは一歩がやたらと長く、実質上飛んでることになって
 いる飛行です。ちょうどトビウオが水面上を長く跳ねている
 ので「トビウオ」と呼ばれているようなものです。しかもその
 一歩でビルの街角をきっちり曲がったりするからやはり不思議
 です。でも所詮一歩は一歩ですから右足のあとにはいずれは
 左足を降ろして地面を蹴らざるをえないのです。いつまでも
 続かない夏休みのような哀しみがそこにはあります。

 そして会話飛行。
 これはひとりで飛ぶのではなく、ほかの誰かいっしょに飛ぶ
 ヒトが必要です。ボクは中学のころ当時は存命中だった作家の
 柴田連三郎氏と空をご一緒したことがあります。もちろん夢で
 ですが。それもなぜかどこかのゴルフ場の上空だったんです。
 そのときの会話を覚えていればここで克明に再現してさしあげ
 たのですが、いまとなってはそれも夢のまた夢です。

 ほかにも「階段飛行」とか「床上飛行」とかいっぱいあるの
 ですがキリがないのでやめます。

 いつか「ほんとうに飛べる方法」を体得した夢をみたことが
 あります。夏至の日の正午、南に向かって右腕を前に2回、
 左腕を後ろに3回まわした後、のどちんこを太陽にみせながら
 「◯◯◯◯◯◯◯」と叫ぶのです。
 
 

 

 

西橋裕三の過去のコラム一覧

0324 2000.12.15 教養番組の録画者
0323 2000.12.14 飛行夢家
0322 2000.12.13 ブルース的
0321 2000.12.12 カヌーライフ
0320 2000.12.11 逆デジャブ
NO
年月日
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