コピーライター、営業中
イギリス系京都人のアボット・マークからバトンをもらいました、
九州系滋賀人の富田克人と申します。
1983年生まれの29歳。
私、いま、営業中です。
(名刺の役職が営業職ということです。)
入社して3年半コピーライターをやって、営業職に移りました。
TCC新人賞の受賞作は、コピーライター職時代の仕事ですが、営業1年目でいただきました。
クリエイティブ局にいればまわりも受賞をよろこんでくれるのですが、営業局では賞の認知度も高くなく、胸を張ってなかなか受賞報告ができなかったことを覚えています。当時の営業部長に、クライアントから戻る途中の電車のなかでこそっと、
「部長、TCCって知ってます?」
「えっと、なんだっけそれ?トーキョー、クリエイター、クラブ?」
「惜しいです。東京コピーライターズクラブですね」
「へえ、そう」
「えっ、あっ、ぼく、それの新人賞をとったんです」
「えっ、あっ、おめでとう」
「えっ、あっ、ありがとうございます」
というもどかしい会話。
そんなこんなで営業職をやって早2年。
コピーライター職では経験しなかったようなダイナミズムとリアリティの中で毎日を過ごしています。
営業に移って僕がいちばん実感したのは、ビジネスのダイナミズムです。
総合商社や流通業を担当しているということもあって、たとえば、その日の朝刊がそのまま仕事に関係してくる。競合他社の新商品や、M&A、海外の情勢や天変地異が、その日のうちに具体的なオリエンや売上げになって影響してきます。
コピーライター時代には希薄だった「ああ、俺、ビジネスマンやってる」感を、ビンビン感じる今日この頃。
時間があれば日経新聞も隅から隅まで目を通すようになりましたし、各種専門紙やビジネス誌も面白く読めるようになりました。
そんな営業生活のなかで、コピーについて気づいたことがあります。
「コピーって広告のなかだけのスキルじゃない」ってこと。
たとえば、営業なので、クライアントや取引先とガンガンメールのやりとりをします。
一日100件以上のメールを裁くのはザラです。
それくらいになってくると、メールの件名ってめちゃくちゃ大事なんですね。
特に忙しい人から返信をもらうためには、件名が、
「件名:CMお見積もりの件」ではだめで、
「件名:【CMお見積もり】水曜日までに返事をいただけますか?」
くらいではないとだめです。
あと、打ち合わせの連絡も
「グラフィック制作打ち合わせの件」では手帳に書いてもらえる可能性は低くて、
「件名:【●●打合せ】31(水)15:00@13A会議室」(●●は商品名など)
が望ましいです。
こういう受け手発想で、メッセージを設計するのって、まさにコピーワークですよね。
できてる人はできてるんですが、礼儀みたいなのを重視しすぎている人はこういう発想はあんまりないです。どちらが「正しい」・「正しくない」とかはないのですが、「伝わる」ための設計というなら圧倒的に後者でしょうね。
あとは、企画書。
もしかすると広告コピーよりも、ビジネス上重要度の高い仕事かもしれません。
情報が多いのでダラダラした報告書のようなものになりがちなのですが、
基本、エライ人は、ヤマのようなペーパーを秒単位で目を通していくものです。
「先日の打ち合わせを受け、10月新商品の新たなるターゲットに関する調査を行いました。設計といたしましては・・・」
で始まる何十枚の企画書よりも、
「顕在化する男性の美白ニーズに、10億円規模の可能性」
というようなキャッチーな表題をつけてA4一枚に仕上げてあげたほうが、形式としてはぐっと通る可能性が高まります。
こういう企画書ノウハウ。
広告業界では意外と一般的ですが、実はそれ以外の業界でも根幹で求められていることは同じだと思うので、今後コピーライターの新たな働き口になるかもしれませんね。たとえばインフラ業や、エネルギー業界みたいなところは、物凄い金額が動く業界なのでビジネスとしてチャンスがあるんじゃないかと思ったりします。
あと、経験則でしかないのですが、経営層の人ってコピーに弱い気がするのです。ワンセンテンスやエモーショナルな表現が、ぐいっとささるところを目にしてきました。彼らが忙しいということや、普段、ロジカルな分析ばかり聞いているということもあるのだと思いますが、コトバを伝わりやすくする工夫に特別に効果・効率を感じてもらえている気がします。
そう、コピーライティングは広告の枠を超えた普遍的スキルなのです。
コピーライターのみなさん、そして、コピーライターを目指すみなさん、世の中でコピーが活躍出来る場所はまだまだたくさんあるのです。
出版社のみなさん、「ビジネスはコピーで上手くいく。」みたいな本、ご依頼あれば書きますので、よろしくお願いします。
ということで、営業中のコピーライター富田克人でした。
また明日。
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