リレーコラムについて

おとちゃん

板東英樹

今、乗り越えるべき現実が
けっこう山積みだったりします。

乗り越える。

こんなとき、いつも思い出す女の子がいます。
音寧(おとね)と書いて、おとちゃん。

おとちゃんは、生まれて初めてできた
娘の仲良し、親友でした。

「きょうね~、おとちゃんとね~」
娘の口から何度その名前を聞いたことでしょう。

幼稚園の先生曰く、
毎朝おとちゃんがやってくると
「おはよう、おとちゃん!」
両手をひろげ、ハグして出迎えるのが
日課になっていたそうです。

1学期かけて仲良しになった2人でしたが、
突然のお別れが来てしまいました。

お父さんの仕事の都合で、
わずか1学期で、
おとちゃんは引っ越すことになったのです。

引っ越す直前、
おとちゃん家族と近所のお祭りに行きました。
2学期からおとちゃんと会えなくなるなんて
知ってか知らずか無邪気に遊ぶ娘。

そんな娘を見ていると、
おとちゃんがいなくなった2学期、
楽しく幼稚園に行けるのだろうか・・・?
親バカの私は、ちょっと心配でした。

楽しい夏休みも終わり、いよいよ幼稚園の2学期。

朝、いつもどおりの笑顔で、いつもどおり元気に
通園バスに乗り込んでいった娘を見て、
なんとなく安心しました。

ところが・・・その日の夕方、
嫁さんから電話がかかってきました。

娘が幼稚園から帰ってきて、嘔吐した、と。

なんかヘンテコな菌でももらってきたのかな?
風邪でも引いたのかな?

娘はそれから2回も嘔吐し、かなりの発熱でグッタリ。
仕事を切り上げて帰宅した私は、
人生で初めて急患センターを利用しました。

お医者さんの診断は、急性ウィルス性腸炎。
なんでも精神的な部分が大きいそうで、
感受性の強い子供に多い症状とのことでした。

次の朝、急患センターの医師の指示通り
かかりつけの近所の小児科に連れて行きました。
あれこれ話していると、先生からこう言われました。

「親として手を差し伸べたいと思うけど、
 たまちゃんも今を乗り越えようと必死でがんばってる。
 だから、見守ってあげることも大切だよ」

娘が回復し、幼稚園に通うようになって
1週間ほど経過したある日、嫁さんからメールが。

“おとちゃんがいなくなって寂しそうにしてたけど、
他の女の子2人と仲良しになってるみたい。
先生が「おともだちやね~」って話しかけたら、
すごくうれしそうにくっついたりするんだって!”

私は、このメールを見た時、
仕事中だったにもかかわらず
不覚にも涙が出てしまいました。

わずか3才の小さな娘でさえ、
おとちゃんがいなくなった現実を受け入れ、
勇気をふりしぼって新しい友だちの輪に入っていき、
その寂しさを乗り越えようとしている・・・

このできごとがあって以来、
自分の中で乗り越えなければいけない現実に直面したとき、
娘とおとちゃんからいつも元気をもらっています。

40前のおっさんが、
3才の子供から元気をもらってるなんて
情けない話なんですけどね(汗

でも、考えてみたら、子育てって、
本当は子供が親を育てているんじゃないかって思います。

どこまでもピュアで、まっすぐな存在に対して、
自分がいつの間にか忘れてしまった、
素直さとか、勇気とか、ひたむきさとか、
いろんなものを呼び覚ましてくれるというか。。。

娘も乗り越えるために頑張っている。そう思えば、
私もどんなことだって乗り越えられる気がします。

この1年、大なり小なり、
いろんな“何か”を乗り越えてきた
コピーライターのみなさん、
お互いがんばっていきましょうね!
というお話でした(なんじゃそりゃ)

1週間にわたってコラムを読んでくださったみなさま、
本当にありがとうございました!

さて、来週は「電通西日本WEEK~第3弾~」
川口修さんの登場です。川口さん、よろしくでーす!

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