リレーコラムについて

コピーのこと

森俊博

コピーライターは、人を想う仕事。
あるときからずっと、そんなことを意識しています。

仕事で本格的にコピーを書き始めたのは、
いまの会社に中途で入ってからで、31歳くらいのころ。
(ちなみにいまは38歳です)
ADで採用されたのに一人で勝手にコピーを書いていて、
いいコピーって何だろうかと模索していました。
デザイン出身なだけに感覚的に書いていただけなんですが、
ある時、ちょっとコツをつかむ瞬間が。
泣ける広告を見て感動したとか、
ものすごく共感するコピーを見たとかではなく、
ある曲を聴いたのがきっかけでした。

それは、Mr.Childrenの「つよがり」という曲で。

「重い荷物を持つ手にも つよがりを知る」

という歌詞を聴いたときに、
あ、書きたいコピーってこういうことかも、と思ったんです。
傍目には笑顔でいるであろう女性の、その小さな手に、
その人が抱えている弱さを感じ取れるかどうか。
自分が人をみつめる視点というか、眼差しみたいなものを、
このワンフレーズで改めて認識しました。

人はみんなそれぞれ何かを抱えていて、
でも、それを隠しながら必死で生きている。
その何かにちゃんと気づいて、そっと背中を押すような、
そんなコピーを書きたいなあ、と思ったりして。

コピーを書くためには、
商品を詳しく知ることも大切だけど、
どれだけ人間を見つめているか、
どれだけ人の気持ちを想像できるかが何より大切で。
思いやりがない人はコピーライターには向いてないと思う。

なんて言うと自分は向いてないかもしれませんが…。
どうかなー。やさしいと思うけどなー。

コピーライターは、人を想う仕事。
ま、そんな気持ちを胸の中に秘めながら。

会社の売り上げとか、得意先のエラい人を想う仕事も
している冴えないコピーライターです。

ではまた。

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