オリコウサン
夏の終りと秋の初めが重なるある日、
青森の五能線の沿線を歩いた。
砂地の道をたどるとどこからでも海が見えた。
コスモスの群れが咲く平屋で中年の女性が大きな声で
「オリコウサン」「オリコウサン」と呼んでいた。
白と黒のネコが姿を見せ、聞くと
「オリコウサン」はネコの名前だという。
「シゲ」という茶トラのオスは、
確かに槙原が打たれたときの監督の顔に似ていた。
「エポ」はショパンの恋人の名だという。
田園調布の急坂の上のネコだ。
「ユミコチャン」。この平凡な名前のネコは
実は隣のお姉さんの名前で、高校生の息子が
お姉さんに夢中なので母親がつけたという。
酔って帰りオシボリだと思ったら、
テーブルに白い子ネコが寝ていた。だから「オシボリ」。
「ハチ」と「テンテン」。30年以上前に
明日という日は明るい日と書くのね、という歌が
はやっていた。ココロ(心)というネコが生んだ
2匹なので「ハチ」と「テンテン」になった。
(ハチは18歳、テンテンは19歳まで生きた。)
「ひゃく子」。むかしニ子玉のハンズで子ネコを
100円で売っていたらしい。プライスが名前になった。
当時、ニ子玉、自由ケ丘間は110円だった。
青森の日本海側は、きっと吹雪いているだろう。
「オリコウサン」はストーブと向き合っているか、
寝ているか。
あの家には煙突があった。
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