その広告は、広がるか。
博報堂の吉岡丈晴と申します。
僕の初任配属はいわゆるCRではなく、
PR系の局でした。
そこで3年半ほど教えを受けた
最初の師匠がSさん。
現博報堂ケトルCEOです。
(有名人なのでバレバレなのですが、
一応何となく怒られるのがヤなのでイニシャルで。)
Sさんはコーヒーショップ限定の若者向け新聞を
大手新聞社と組んで販売したり(しかも本人が編集長)、
某クルマを複数の有名アーティストに
大胆にアレンジしてもらう広告キャンペーンを展開したり。
今でこそ当たり前と思われている「手口ニュートラル」な手法を
矢面に立ち「実現」する、当時から博報堂のスターでした。
Sさんの教えは明快。
「いいアイディアを出したやつの勝ち」
職種とか年次とか関係ない。
SさんがCDの打ち合わせは、全職能が無手勝流の打ち合い。
僕はラッキー(最後の世代?)なのですが当時のSさんは、
すごい量のアイディア紙を持ってきてそれが全部面白くて、
いわゆるCR職の肩書きを持ってる人たちが
愕然としてる打ち合わせを何度も目の当たりにしました。
僕の案は大量の紙くずとして消えましたけど、
それはそれは痛快でした。
「最初の打ち合わせがすべて」
これは児島令子さんが書かれたコラム
「ファーストプレゼンに愛を込めて。」
とほぼ同じ思想です。
僕は今でも心がけております。
(↑結果が出てるからは別として。。)
そして、
「その広告がどう広がるかまで考えろ」
イベントでもノベルティでもポスター一枚でもCMでも。
アウトプットが広告の「枠」にとどまらず、
どう口の端にのるか、
スポーツ紙に取り上げられるか、
ワイドショーで司会者に話されるか、
今ならヤフトピにのるか。
そこまで考えろ。と。
S師匠はクリエイティブの出来はもちろんのこと、
その先の反響という「結果」にまで厳しい方でした。
あ、もう一つ大事な教えが。
「できるやつは、寝ない」
いやいや寝ましょうよ。できるとか関係なく。人間ですから。
でも本当にSさんは寝ずにバカバカ仕事をし、
必然的にそのリズムに僕も付き合う(付き合わされる)ことに。
たまに電車で帰れる日。
僕は寝過ごして「金沢文庫」まで行く事がしばしばありました。
(マニアックな路線情報ですね。)
ときは流れ、2012年、夏。
僕がたずさわったトヨタ自動車「AURIS」のキャンペーン、
「常識に尻を向けろ。NOT AUTHORITY,BUT AURIS.」。
シリーズのYouTube再生回数は1,000万回を超え、
ワイドショーなどでも数多く取り上げられました。
別にそれだけが狙いではないけど、話題化という指標では、
このクルマとしての広告目標は
達成したのではないかと思います。
僕ひとりの力では当然できなかったCPだけど、
少なくともS師匠のもとで培った
「話題化する視点」があったからこそ、
実現できたアウトプットなのだと思います。
Sさん、ありがとうございます。
(来週の火曜のすしの予定は大丈夫ですか?)
でも僕はもう寝るタイプになりたい。
いま朝の9時だけど。。
博報堂コピーライター
吉岡丈晴
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