リレーコラムについて

TPPとTCC

吉田早苗

「在来作物」という言葉を知ったのは、最近のことです。

栽培者自身が何十年、何百年という世代を超え
種苗を管理して守ってきた地方の野菜や果物たち。
味、香り、手触り、歯触り、栽培方法、調理方法は、
その土地の風土と密接にかかわり、
「生きた文化財」と呼ぶ人もいるそう。

先週は、「在来作物」「やまがた伝統野菜」のドキュメンタリー映画
『よみがえりのレシピ』の自主上映があり
あざみ野の市民ホールまで、探鳥しながらお出掛け。

「50年農業をやっているけど、
たった50回しか、つくったことがない」

そうか、1年に1回収穫するものを育てるということは
そういう時間を過ごすことなんだと
改めて気づかされます。

「風土、風味、風習、風格、風情・・・
実は、植物を育てるためには<風>が大切なんだ」

正確に言葉を再現できていませんが、
<風>がキーワードで、
風土=FOOD らしい。

「だだちゃ豆」
「温海(あつみ)カブ」
「田川カブ」
「藤沢カブ」
「宝谷カブ」
「外内島(とのじま)キュウリ」
「甚五右ヱ門芋(じんごうえもんいも)」
「梓山(あずさやま)大根」
「もってのほか」
「赤根ほうれん草」
「金谷ゴボウ」
「雪菜」

パンフレットには、これだけの野菜が紹介されていましたが
(「だだちゃ豆」以外は、食べたことないですが)
山形には160種の在来作物があるそう。

映画には、地方イタリアンの草分け、
「アル・ケッチャーノ」の奥田シェフが登場し、
その在来作物を次々に料理していくのが圧巻。

辛味、苦味、濃い旨み、高い香り、甘み、歯触り、
独特の個性と風味を持つ、強い生命力の味を
どうやって食べれば、よりおいしいか。
表面を焦がしたり、土の香りを持つ、トリュフを添えたり
個性を消さずに、おいしさへと変換させる過程は
料理=理(ことわり)を料(はか)るという
ことを実に納得させてくれます。

生産者のおじいさんと奥田シェフと
伝統野菜を研究している山形大学の江頭先生が
山奥の畑で、抜きたてのカブをほおばる。
手放しの笑顔でうなずき合うシーンは
この笑顔が農業の未来になるといいなと思いました。

ちなみに一般に出回っている野菜の栄養価は
どんどん減っています。
1950年に発行された『日本食品標準成分表』によると
1950年のほうれん草は、100gあたりのビタミンC含有量は150mg。
それが1982年には65mgになり、
2000年には35mgになり、約5分の1にも低下。
同じく、鉄分も1950年は13.0mgも含まれていましたが、
1982年では3.7mg、2000年では2.7mgと、
こちらもほぼ5分の1に減少しています。

ところで、山形の「つや姫」というお米を食べたことありますか?

実は、まだ「山形97号」という開発ネームのころから
もう6年ぐらいブランドづくりをお手伝いしています。
「つや姫」のモダンで明るいブランドマークは佐野研二郎さん。
阿川佐和子さんのコマーシャルも3年目になります。

炊きたての「つや姫」をお茶碗によそい、
「まつのはこんぶ」を真ん中に埋め込む。そして、30秒、待つ。

人生最後の一食を選べと言われたら、これかなぁ・・・

月曜から金曜まで、読んでいただきありがとうございます。
(今日は長くなりました。お名残り惜しくて)

来週は、山本尚子さんですよ~
「時々、想って、 時々、忘れて いいですか?」という
コピーの前で、ポスターの前で、その世界観に
しばし、立ち尽くした思い出があります。
よろしくです~

追伸、
さて、農業のことを書いていたら、「TPP」がアタマに浮かびました。
みなさま、すみません。今日のタイトルに強引に使います。
これ、コピーライターのサガ?
著作権の話じゃなくて、恐縮です。

NO
年月日
名前
5836 2024.12.26 小林大 極めるチカラ
5835 2024.12.25 小林大 泣かせるチカラ
5834 2024.12.24 小林大 う⚪︎ちのチカラ
5831 2024.12.23 小林大 コピーのチカラ
5827 2024.12.22 都築徹 包丁
  • 年  月から   年  月まで