にゃん。
太陽の暑さで目が覚める。
時計はずいぶん前から止まっているけど、たぶんお昼すぎくらいだろう。
窓の外では、ちょっと悲しげなオルゴールを鳴らしながら、廃品回収車が走っている。
家族がみんな出掛けていなくなった1階に下りると、
乾きかけた冷やし中華が、
サランラップに包まれて、食卓に置いてある。
2階に戻って、テレビをつける。
壊れる寸前のブラウン管は、キーンという音を出しながら、
真っ暗な画面の右上に、ビデオ2という文字を映し出す。
プレステのスイッチを入れて、いつものゲームを始める。
昨日はどこまでやったっけ。
よい子の皆さん、5時になりました。さぁ、おうちへ帰りましょう。
いつのまにか、そんな町内放送が流れる時間になっていた。
学校から帰って来た子供たちの笑い声が聞こえる。
途端に怖くなって、テレビの音を消す。
窓から自分の姿が見えないように、身をかがめる。
僕は、ここにいません。
日が暮れて、会社から帰って来た親が、
ひと言だけ話し掛ける。
明日は、学校、どうするの?
返事はしない。
僕は、ここにいません。
ここにいるのは、僕ではない、知らない人です。
そんなことを、心の中で必死に唱えながら。
中学の頃、僕は不登校だった。
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