リレーコラムについて

にゃんにゃんにゃん。

川田琢磨

高校に入ると、あっさり学校に通えるようになったのは、自分でも意外だった。

それまでの知り合いが誰もいないのをいいことに、
理想とかけ離れすぎてしまった過去の自分をどこかに隠し、
でっち上げの、価値ある自分を演じていた。

中学には友達がいっぱいいて、
ちょっとワルそうな奴らともツルんでたーだの、
一瞬だけ付き合ってた女の子がいたーだの。

頭の中にいた理想の自分が、体を借りて、学校に通っている感覚。
現実を受け入れられなかった弱い自分が、立ち直ったわけじゃない。
部屋に引きこもっていた弱虫は、相変わらず、心の中に閉じこもっていた。

心と体のダブルキャスト。
結局、自分の弱さから逃げていることに変わりはなかった。

中学の真っ白な内申書は、
大晦日の大掃除のとき、誰にもバレないようにこっそり燃やした。

そんな生活が壁にぶち当たったのは、大学4年の就活のときだった。

まーぁ、とにかく受からない。
売り手市場と言われていたのに全滅。秋採用も全滅。
大学院に入ってからも就活を続けたけど、
やっぱりどこも受からなかった。

中学受験のときの、苦い記憶がよみがえる。
浮かび上がってくるのは、
あのころから何ひとつ成長していない自分の姿。
いくら自分の強さを偽ったところで、
本当の強さなんて、手に入るわけがなかった。

自分の弱さを認められない。
それこそが、僕の弱さだった。

得意なことしかやろうとせず、
人並みの努力しかしないくせに人並み以上でありたいと思い、
自分の力量不足を環境のせいにする。

相手を知ろうと思うとき、見ようとするのは、むしろそういう部分だ。
それから目を逸らし、隠せているつもりでいたのは、自分だけだった。
その弱さを乗り越えるための方法は、もう一つしか残っていなかった。

最後の就活が始まろうとする直前。
もう社会人になったサークルの同期と旅行に行った。

夜もだいぶ深くなったころ、缶ビールをチビチビやりながら、
過去の自分を、10年ぶりに、人前に晒した。

中学のとき、不登校だったんだ。

彼らは黙ったまま、聞いてくれた。

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