モヤシのヒゲ
井田万樹子
【相談者】
夫の実家に帰ると義理の母はいつも、モヤシのヒゲ根をそれはそれは丁寧に取り除きます。「ヒゲを取ると取らないとでは、味が全然ちがうの」と、しつこいくらい私に教えてくださるのですが、仕事も子育てもしている私にとって、モヤシのヒゲ取りに30分も費やすなんて信じられません。とはいえ、普段、モヤシのヒゲを取らずに料理をすると「もっとおいしくなるものを、おいしくない状態で食べている」という、みじめな気持ちになるようになってしまいました。反対に、モヤシのヒゲを取りはじめると「なぜこんな面倒なことをしなくてはいけないのか?」と、料理の途中に怒りがこみあげてきます。今後、どうすれば楽しくモヤシを料理することができるでしょうか?(大阪市•34歳女性)
朝日新聞の夕刊に、この記事を見つけたとき
「しまった…!」と思った。
以前から疑問だった。
新聞の相談コーナーに手紙を送る人は、一体どういうつもりで送っているのか?
本気で悩んでいるのか?誰かと思いを共有したいのか?
それとも単なるヒマつぶし?
謎を解くために、わたしも送ってみよう、と思ったのである。
そうです。
上記の相談を送りつけたのは私。
まさか採用されるとは…
モヤシのヒゲとり、いや、別に悩んでたワケでは…いや、悩んではいたんだけども…
どうしよう。どうしよう。
夫に、この記事を見つからないようにしなければ…
お義母様にもバレないようにしなければ…
とりあえず、その日の夕刊はさっさと隠し、
数日間は平穏無事に過ごした。
ある日、夫が「朝日新聞社から、郵便が届いてるよ」と
大きな封筒を持ってきた。
どきぃ…
“掲載紙”と書かれてあった。
「何か、掲載されたん?」と、夫。
「う、うん…」
嘘は言っていない。
「何の?」
「いや、あ、あの、こないだの…⏃≪∅∵⁈…」
夫は“掲載紙”を奪い取ると、トイレに入っていった。
長時間出て来ない。
記事を探し続けているのだろうか。それともウ◯◯だろうか。
ザーッ!と派手な水の音をさせて、夫がトイレから出てきた。
「おまえ…年齢サバよんでるやないかっ!!!」
バレた…。
バレてしまった。
いや、あのね、前から疑問やったんよねぇ、
なぜ女は年齢を少し若く書くのか?
いや、なんか、筆が勝手にそうなっちゃうってことが、
今回わかってんけどね、あは、はは、
なんて言い訳してみたのだが…
“掲載紙”は実家にも届けられ、お義母様にも
「年齢偽証事件」として、しつこく言い伝えられる結果になってしまった。
で、モヤシ相談の回答は。
私は「中島らもの明るい悩み相談室」の大ファンなので、
そういう知的ナンセンスギャグな回答を望んでいたのだけれど…
M-1グランプリで優勝したこともある某有名芸人からの回答は
「35円のモヤシではなく、65円の根きりモヤシを買ったらいいんじゃないですか?」だった。
そんなしょーもない回答されたら質問までおもしろく見えなくなってしまうやんけー
そんな答え、子どもでもできるわ…私はぶつぶつ独り言を言うしかないのだった。
さて、来週のリレーコラムは、なんと、
なんと、
児島令子さんです!!
あの児島さんです、ホントです。
断られる覚悟で、おもいきってお願いしたら、お引き受けくださいました。
以前、東京駅をさっそうと歩く児島さんをお見かけしました。めちゃくちゃ格好よかったです。
来週はとっても寒い一週間だそうですが、
児島さんのコラムのおかげで楽しく過ごせそうです。
児島さん、どうぞよろしくお願いします!
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