リレーコラムについて

大阪人の作り方

田中泰延

今日で私の順番も終わりである。
5日間、このコラムを書いてきて、どこが一番苦労したか。

それは、「東京コピーライターズクラブ」と表記することである。

パソコンに向かっている人は、試しに
とうきょうこぴーらいたーずくらぶ、
と入力して一括変換してほしい。

わたしの環境では、

「東京コピーライター図クラブ」

と変換されてしまうのである。
どんな図なのだ。

そこで仕方なく、東京コピーライター、まで入力して
「ズ」だけをキーボードで打とうとするのだが
カタカナ変換の方法がわからない。

そこで私は効率よくカタカナの「ズ」が出るように
「ズッキーニ」と打ち込む。

「東京コピーライターズッキーニクラブ」
と一括変換し、しかるのちに「ッキーニ」を消去する、
という方法を採用したのである。

おそらく、これはいろんなパソコンで起こっている共通の問題だと思う。
ズッキーニと打ち込むことは、
間違いなく全員がやっていることなのである。
これを繰り返しているうちに、いつか必ず「ッキーニ」を消し忘れる者が現れる。

「東京コピーライターズッキーニクラブ」という誤植が
なにかの印刷物や、公式のホームページに載る日が来る。
私は警告しておく。

さて、私は大阪生まれ、大阪育ちである。

小学生の頃は毎週土曜の午後はランドセルを玄関に投げ捨て、
なぜか家にある冷えたお好み焼きをオカズに
炊飯ジャーに保温されていたご飯を食べながら
吉本新喜劇を見る、という
ほかの地方とは違う義務教育を受けた。

いまは東京コピーライターズッキーニクラブの一員だとはいえ、
大阪で生まれた女やさかいなのである。
東京へはようついて行かんのである。

よく、
大阪と東京の違いはなんですか?
と尋ねられる。

これに対して、いろんなところで答えているので、
今日はその話をさせてもらいたい。

大阪人の特徴は、「チームプレー」にあるのだ。

よく飲み屋で無茶ぶりされる。

「田中さん、大阪でしょ!なんか面白いこと言って!」

だが、いきなりそんなこと言われても、ピンではできないのである。

大阪人は、面白いことをパス回しでゴールまで持っていくのである。

大阪人にとっては、誰かが面白いことを言う、というのは
サッカーにおける「スローイン」にすぎない。
そのあと、複数のプレーヤーが
そのボールをドリブルしてパスして繋いでいく。
それが独特の教育でつちかわれた大阪国民の義務なのである。

あるとき、麻布十番で大阪人ばかりが飲んでいるところへ、
博報堂を退職したばかりの友人を紹介した。

「こちら、元・博報堂の○○さん」

「ほな今は何堂?」

「文明堂?」
「海洋堂?」
「ジュンク堂?」
「亀屋万年堂?」
「三十三間堂?」
「額縁画材の世界堂?」
「テレビ朝日の堂真理子?」

…大阪国民、
もうお前らには絶対友達は紹介しないと思ったものだ。

この場合、
「ほな今は何堂?」
と発言した人物は各プレーヤーの能力を知っていて、
はじめからそのあとの連携を期待してボールを転がしているのである。

各人の能力を出し切り、チームプレーを遂行し、
そしてその栄誉は団体のものなのである。

なので、東京などで、
大阪人がなにか面白いことを言い始めて場が沸いた瞬間、

「超ウケる」

「田中さんオモシロイ」

などの言葉で場が閉じられることに、
一番がっくりくる。

評価は期待していないのだ。

いつからあなたは審査員に任命されたのだ。

私たちのチームに入り、パスを繋いでほしい。
そしてあなたにシュートを決めてもらいたい、
と大阪人は期待しているのだ。

また、大阪人がボールを転がし始めると

「それは、ウソか?」
「それは、つくり話か?」
「それは、ネタか?」

などと問い詰めはじめる者がある。

はっきり言って大阪人にとっては、面白ければ
それが事実かどうかなど、どうでも良いのである。

ネタ?とか寝てない?とか
そんな貞操観念を問うても仕方ないのである。

しかし、以上のような大阪人ばかりいるわけではない。

真面目で、
銀行員のような顔をして銀行に勤務している大阪人もいるのである。

ウケ狙いばかりしている、わずか9割の大阪人のせいで
残りの大多数の1割の大阪人は迷惑していることは知っておいてほしい。

私は、大阪人であるが大阪人とは友達になりたくない。
めんどくさいからだ。

それでも、大阪国民のパスポートを取得したい人は、
まず冷えたお好み焼きでご飯を食べる義務教育から始めれば、
30年ほどで簡単に取得できるだろう。

以上でわたしの順番は終わりです。
こんなコラムを毎日読んでいるような
暇な人というのは
本当は友達にしたくないタイプなのだが
5日間お付き合いありがとうございました。

来週この欄を担当するのは
、
松下康祐くんである。

マツシタコウスケ。

彼が入社してきて以来、
あの巨大なパナソニックを一代で築き上げた人物として
畏怖の念を持って接してきたのだが、
最近になってどうやら違うということが判明した。

だまされたという気分だ。
よって、次の書き手として申し付ける次第である。

AKB48のことはどんな小さなことでも彼に聞けば大丈夫な人である。
まゆゆの等身大POPを抱いて飛行機に乗せて東京から運び、
いまもデスクの横に置いてあるという、本当に友達になりたくないタイプだ。

松下くん、東京コピーライターズッキーニクラブの旗手として
よろしくお願いいたします。

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