リレーコラムについて

MOON OVER THE MOON RIVER

岩井俊介

前回からの続き。

翌日。
Nashvilleから、GEORGIAを目指す。
今夜はATLANTAへ。
LAを発ってから、最大の街。
我がクルマはというと、
雪中走行の泥と、融雪剤なのか、
妙な白いペースト状の粉で全身ドロドロ。

このまま南部最大の都市に乗り込むのでは、
あまりにみっともないと、
チャタヌーガを越えたところでカーウォシュに入る。
マシン洗いの後、
6人ほどのチームがキビキビと手洗い。
一人の男が
「こいつはボスニアから来たんだ」
と仲間を紹介してくれる。
彼の大きな荒れた手に、バルカンの嵐を見る。

夕方。
ガスステーションから、
WESTIN、リベンジ。
しかし、 ダウンタウンのWESTIN PEACHTREE PLAZAは満室。
実にHEAVENLY BEDと相性が悪い、今回のアメリカ。
代わりにRITZ CARLTONを取る。
快適なチェックイン。
VALET PARKING、
そしてドアマンのいるホテルの有り難さ。

ホテルは立派だが、ほぼ無人のダウンタウン。
周囲に飲食店はHARD ROCK CAFEしかない。
VALETにクルマを出してもらい、フリーウェイ沿いへ。
WAFFLE HOUSEを見つける。
名前は自由が丘のお菓子屋のようだが、
典型的なアメリカンダイナーチェーン。
パンケーキの代わりにワッフルが食える。
今回の旅でも数回お世話になったが、
どこもブルーカラーな感じがいい。
初期TOM WAITS的風景。
客の誰もが、何かの重みを背負っている。
「Hi! Sweetie!」と、
黒人のおばちゃんウィトレス。
一人旅のココロにしみる一言。
やっぱり、南部はいい。

いよいよ、大陸を渡りきる日。
一路サヴァナへ。
快適なワインディング。
思いっきりぶっ飛ばしていると、
街の入り口に隠れていたパトカーに捕まる。
今回の旅で3回目。
「いや、トイレに行きたくってね。
つぎのGSまで・・・」などと、
ごちゃごちゃ言ってみる。
アンちゃん風警官が一言。
「こんどやったら、牢屋に入れるからな!」
牢屋に入れられる前に、ジョージアを出てやるからな。
キップはなし。

サヴァナが近づく。
宿を決めるために、空港へ。
到着ターミナルにはたいてい、
その街のほとんどの宿のブローシャーと、
無料直通電話がある。
アメリカ合衆国の長所の一つ。
まず、WESTINへ電話。
満室。
そんなにわたしが嫌いか。
今夜もHEAVENLY BEDはなし。
HYATTへ。
パーティ付きで300数十ドル。
パーティ?
そうだ、今日は大晦日だった。
結局、リバーサイドから少し離れたHILTONに入る。

「ムーンリバー」のモデルになったといわれる
サヴァナ河の上に、20世紀最後の月が出ている。
厳寒。
これで、南部なのか?
河の上に、「一応お約束ですから」といった感じで
花火が上がる。
カウントダウン。
21世紀が来た瞬間。汽笛が一発。二発。以上、終わり。
ここサヴァナでは、限りなくシンプルに世紀が変わった。
寒さに耐えられず、ホテルへ戻る。
CNNで、世界のカウントダウンを見る。
東京の中継は、なぜ、いつも芝増上寺なのか?
ベルリンの世紀越えは美しい。
ティアガルテンのオーケストラ。その上に花火。
ストイックで華やか。
うらやましい。

次回へ続く。

I fly,therefore I am.
岩井俊介

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