詩の2
喫茶店で自分の注文した品がいつまでたってもこないので
オーダーを忘れているのではないかと確かめたら
ウェイトレスに「あ」と言われただけで
謝りもされなかった男、
松葉杖で電車に乗りこんで
かなりよろよろとし通しだったのに
終点まで誰からも席を譲られなかった男、
何百枚もCDを買って応援していたアイドルが
自称青年実業家と妊娠済み結婚をしたというニュースをきいた男、
エレベータの出口で「開く」のボタンを
最後の客が出るまで押していたのに
誰からも礼をいわれなかった男、
フェイスブックで誕生日メッセージを送った相手から
自分の誕生日にはメッセージが来なかった男
彼らがどのような偶然か
とき同じくして叫んだ。
「この国は悪い方向にむかっている」
その声は響きあい、
共鳴しあい、
地鳴りとなってあたりを包んだ。
そして空には漆黒の雲が立ち込め、
豪雨と雷雨の轟はその地鳴りに不穏な和音を重ねた。
のちの歴史で「おとこ革命」と呼ばれる革命、
その前夜のことである。