詩の3
だれも言わないので、
ひとりぐらい言う人間がいてもいいと思うので、
言います。
鯖、ありがとう。
あんなにおいしくて、
しかも、あんなに安い。
そんな生き物が、ほかにあるでしょうか?
鯛とか鰤とかもおいしいけど
高いから、
そんなに偉くはないと思う。
関サバとかもあんまりえらくない。
ノルウェーの鯖は、えらい。
イワシは安いけど、
味は
鯖には負けると思う。
鯖は、値段に比べて
おいしすぎると思う。
なぜあんなに安いのか。
大量にとれるからです。
自然界には、
鯖の恵みが満ち溢れています。
鯖は、
一方的に私たちに与える。
その肉体を。
おもとめやすいお値段で。
ギブアンドギブ。
鯖は、愛です。
いえ、鯖が、愛です。
でも、みんなちょっと鯖に甘えていないでしょうか。
自分たちが何もしなくても
鯖はずっとそこにいると
振り返れば鯖がいると
安易に考えていないでしょうか。
いつまでもおいしい肉体を
安い値段で提供してくれると
たかをくくっていないでしょうか。
ある日突然、
鯖はこの星に見切りをつけてしまうかもしれません。
その日に泣いても、
無駄なのです。
だから、今、わたしは
お礼を言いたい。
鯖のみんな。
ありがとう。