リレーコラムについて

変態か? ヘンタイか?

こやま淳子

「淳子さん、山田五郎さんと仕事しません?」
ある日、ギャラリストをやっている友人・小和田愛ちゃんが言いました。
ギャラリストというのは、つまり昔でいう画廊なんだと思いますが、
彼女はAI KOWADA GALLERYという現代アートギャラリーを持ち、
何人かのアーティストをマネジメントしながら個展を開催したり、
また、美術に詳しいスキルを使っていろいろな企画をしたりもされています。

聞けば、彼女がマネジメントしている作家さんの作品を
あのタレントの山田五郎さんが買ってくれた。
つまり五郎さんは彼女のお客さんだったのですが、
いろいろやりとりをするうちに仲良くなり、
五郎さんと仕事したい!という気持ちがフツフツ沸いてしまったとのこと。

ま、よくわからないけど、そこはミーハーな私。
「とりあえず五郎さんとお食事しましょう!」 という彼女の言葉に、
行く行く、おもしろそう。 と、軽い気持ちで出かけていきました。

そして彼女がそんな無謀なことを言い出したのもよくわかるくらい、
山田五郎さんはおもしろい方だったのです。

テレビで見て知っているつもりだったけれど、
私はこの人のすばらしさを100分の1も理解していなかった。
ご存知の通り、多方面に知識の深い方なのですが、
そういう方にありがちな、人の話を聞かない感じはまったくなく、
その場に出た話題を楽しく広げてくれるんです。
こちらが言うことをごくたまーに五郎さんが知らなかったりすると、
「えっ。そうなの!?」 と、うれしくなるほど素直なリアクションで聞いてくる。
人にひけらかすためなどではなくて、
本当に純粋に好奇心や知識欲が旺盛な方なんですね。

五郎さんとだったらいつまででも話していられる。 そう思いました。
実際その日は19時頃にお会いして、夜中の2時か3時頃まで
ずーっと同じお店でお話していたと思います。
五郎さんと仕事したい!
帰る頃には私自身も、すっかりそんな気持ちになっていました。

西洋美術に詳しく、
それを誰にでもわかるカジュアルな表現で伝えられる五郎さんと、
なにかビジネスができないか?
というのが、小和田さんの考えでした。
数日後、私はパワーポイントに大きなフォントで
「ヘンタイ美術館」という言葉を書きました。

美術って高尚で敷居高い感じもあるけれど、
五郎さんの話を聞いていると
ちょっとヘンタイな美術家や作品がいっぱい。
そんな視点で西洋美術を紹介されたら、
みんなマンガやドラマを見るように
楽しく知識を深めることができるのではないでしょうか。
「ヘンタイ!ステキ!五郎さんぽい!」
小和田さんの賛同も得て、
プロジェクトは博報堂グループ(株)voice visionの上地さんも加わり、
より具体的になっていきました。

しかしある日。
「五郎さんが難色を示している」
と小和田さんから電話がありました。
「変態って言葉を軽々しく使うもんじゃない、
本物の変態に失礼だっておっしゃっていて…」
五郎さんの意見はこういうことでした。
美術家にはたしかに変な人が多いけれど、
性的倒錯的な人に限ると狭まるし、
変態っていうのはもっと深い世界なんです。
だいたい『美術手帖』よりも
『S&Mスナイパー』の読者の方が多いんですよ。
そういう世界中に数多いる変態な方々に失礼ですよ。

このクレーム自体がもうおもしろくて笑ってしまいましたが、
やっぱりただの「おもしろ美術館」じゃつまらない。
ヘンタイって性的倒錯って意味だけじゃなく、
もっと軽くて広い意味で受け取ってもらえると思う、
などと主張し、私たちも譲りません。
結局、「変態」ではなく「ヘンタイ」とカタカナ表記ならOK。
ということに落ち着きました。
(ま、もともとカタカナだったんですけどね)

そんなわけで、『ヘンタイ美術館』プロジェクトが始まりました。
まず5月にエキサイトismの協力も得て、トークショーを開催。
「ルネサンスの三大巨匠ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ。いちばんのヘンタイは誰だ?」
(当日のレポート:http://ism.excite.co.jp/art/rid_E1398145943118/)

このとき五郎さんとトークしたことが
「こやま文化人気取り説」の原因になってしまったわけですが、
イベント自体は大成功。 五郎さんのおもしろすぎる解説に、
当日お客さんに書いていただいたアンケートはすべて5段階評価の5。
記録に来ていたカメラマンの方にさえ、
「次も聞きたいのでオレを指名してください!」 と言っていただいたくらいの大好評ぶりでした。

そしていま、その「ヘンタイ美術館」ロゴを、
なんと秋山具義さんにつくっていただいています。
近日Facebookでもヘンタイ美術館ページをつくって コンテンツを流していく予定です。
詳細はそのうちAI KOWADAGALLERYのサイトなどでも告知するので、
みなさん楽しみにしていてくださいね。
AI KOWADA GALLERY
http://www.art-is.com/en/aikowadagallery/

(すみません、おもいきり宣伝になってしまいましたが)

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