リレーコラムについて

コピーライターの360度。

こやま淳子

突然ですが、私はコピーを書くのがわりと好きです。
大好き、と言ってもいいでしょう。
コピーライターなんだからあたりまえだろう、と思われるかもしれません。

でも近頃はなんだか、
「オレ、コピーライターなんだけど、コピー書くの好きじゃないんだ」
「なんか最近、コピー以外の仕事ばっかしてるんだよねー」
なんていうのがちょっとカッコイイ、みたいな風潮になっていませんか?

ま、私もこのリレーコラムでは、そんな世の中にちょっと迎合し、
コピーより上流のコンセプトづくりとか、広告とは違う企画のお仕事とか、
そういうお話ばかりしてきましたが、
もちろんいわゆるオーソドックスなコピーを書くお仕事も
ガンガンやらせていただいております。
キャッチコピーだけじゃなく、
カタログやDMやインターネットの細かいコピーで、
「あ、文字数多いですか? 減らしましょうか?」
なんてアートディレクターに言いながら、チマチマ言葉を削っていく。
そんな作業にも時折、至福を感じてしまうくらい、
書くということ自体が好きなのです。
そして、いまの時代だってそれは求められているし、
ちゃんと効果も出せる、ということも感じています。

2年前、某NGO団体のコピーを書きました。
クライアントに了承取る時間もないので詳しくは割愛しますが、
そのコピーはかなりの反響をいただきました。
首都圏の交通広告とチラシやDMをまいただけの出稿でしたが、
資料請求は例年の3倍にもなり、
ツイッターでは毎日のようにそのコピーがつぶやかれ、
広告業界以外の方たちにも
「えー!あのコピー書いたの淳子さんなの!?」
「私、あれ見て泣いた!」「子供と話し合うきっかけになった!」
と言われる仕事になったのです。

なんだ、グラフィックにもまだこんなに力があったんだ。
と、再認識したと同時に、
そこからまた、長い長い作業がはじまりました。
すべてを説明できるわけではない交通広告の特性上、
「あのコピーってどういうこと!?」という人々の疑問に答えるため、
他の媒体の作り方も繊細に考える必要があったのです。
一般向けのパンフレットでは? 企業向けでは? DMでは?
と、さまざまな媒体で、伝え方や見せ方を
クライアントやアートディレクターと議論しながら、
丁寧につくっていきました。
それらは期や媒体が変わるとまた前の反省を生かしてつくり直され、
いまもそのお仕事は続いています。

代理店で仕事をしていたときは、
何故かそういうパンフレットの細かいコピーなどは
外の制作会社に発注されていて、
「あ、カタログ出来たんだ」
と後で知ることも多かったのですが、
あれってもしかして逆に効率の悪いやり方なんじゃないでしょうか。

メイン媒体のキャッチコピーを書いたコピーライターが、
それを見て心の動いた人々の気持ちを想像して、
次に読まれる媒体の言葉をつくっていく。
そうすることで商品の情報もまた自分にインプットされていくし、
立体的にキャンペーンを見られるようになる。

360度のコミュニケーションなんて言い方が流行りましたが、
コピーライターにとっての360度って、
まずはそういうことだったりするんじゃないでしょうか。
そしてそういうことの出来るコピーライターの方が、
コピー以外のこともいろいろ出来ます!というコピーライターより
将来的に仕事あぶれないんじゃないでしょうか。
考えてもみてください。
「僕、釘打つの好きじゃないんですけど、大工仕事以外もいろいろできます」
っていう大工さんに、発注したいと思いますか?
それよりも「なんなら家具とかも家に合うようにつくりましょうか?」
なんてこともできる大工さんに発注したいと思いませんか?

もちろん「仕事たくさんあってやる時間ないんだよ!」
ということもあるでしょう。
だったら代理店も、もっとコピーライターを採用すればいいのに。
と思いますが、でも、まあ、いいのかもしれません。
「そんな仕事じゃなくて、いろんなイマっぽい企画やりたいから、
私は会社にいるんです」
という方もいるでしょう。うん、それもいいと思います。
その方が、私のようなフリーランスに仕事まわってきますからね。

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