報道部という衝撃 ③
ある晩、妙にモダンなしゃぶしゃぶ屋に、
東海テレビ報道部のH記者とSデスクから呼び出された。
夕方の番組「スーパーニュース」の視聴率が低迷しているから、
番宣CMをつくってもらえないか、という話だった。
箸でつかんだ肉を湯の中で揺らしながら、
昨夜この店をロケハンしたというH記者から、
番組の特徴を聴き出すことにした。
興味を引いたのは、24時間走り回る記者の生態だった。
そこで、彼らにカメラを向けてほしいと提案したところ、
「逆にカメラの存在を誰よりも意識する人種なので、
できれば避けてほしいかなって思うんですけど」
という返事。
なるほど。やっぱり意識するんだ。
「だからこそ、ぜひお願いします」
いつもより強くお願いした。
カメラの存在を被写体に極力意識させないよう、
社外の人間である自分と清水淳之介監督は、
撮影に同行しないことが条件だった。
今回の手法は、完全なドキュメンタリー。
やらせは、一切ない。
なにが起こるか、一切わからない。
Nカメラマンから、毎日届けられるテープの山。
膨大な撮れ高から、清水監督が使いどころを的確に選び出していく。
過去2回の仕事でCMを理解しつつあったNカメラマンは、
事前に書いたコピーでは仕留めきれない、いい画をいくつも撮ってくれていた。
編集室でコピーを書き、その場でH記者と清水監督に提案する日々。
夜明けが近づくと編集にひと区切りつけて帰るのだが、
東海テレビの前の歩道で、不安な気持ちを監督と語り合うのが日課だった。
完成試写。
記者、デスク、キャスター、報道部の幹部。
スーパーニュース本番直後のスタジオ前に、
仕上がりが気になる社員が100人も集まった。
緊張した面持ちのH記者が、数時間前に出来上がったCMを流す。
大きくて温かい拍手が起きた。
各曜日の担当デスクが、
自分の出ているCMを流したがるという話も後日聞いた。
幸せな仕事が、またひとつ増えた。
東海テレビ「スーパーニュース」番宣CM
5827 | 2024.12.22 | 包丁 |
5826 | 2024.12.22 | 東海テレビプロジェクト |
5825 | 2024.12.22 | 競争 |
5824 | 2024.12.17 | アウト |
5823 | 2024.12.16 | セーフ |