大学教員の使途。
大学教員に、かくべつ使命などないと思います。でも使い道は、いろいろ世の中の側が、見つけてくれます。今回は、大学の外での仕事について。
多くの大学教員にとって、学外での最大の仕事は、学会の運営業務でしょう。世の中にはナントカ学と称されるものが無数にあり、そのそれぞれに、それを専攻する学者の集まりが存在します。私も、いくつかの学会で理事などの肩書をもっています。が、こちらの方面はあまり熱心ではありません。職場で多くの学者・研究者といつも接しているのだから、学外くらいはより多様な人とからみたい、と考えるタイプです。
でも、『ソシオロジ』という社会学同人誌の編集委員は、けっこう楽しんでやってます。何をやっているかというと、「査読」です。投稿されてきた論文を毎回4~5本を読み、それぞれ評価をし、コメントを書き、編集委員が集まって1日がかりで議論をし、掲載する原稿を決めていく。そんな作業を、年に3回。任期は4年。なかなかハードです。それ以外にも、もろもろの学会誌から、論文査読の依頼はきます(基本的に受けます)。
コピーライターだった頃は、審査されるのがたいへん嫌だったものですが、いつの間にか若い人に対して、とやかく言う立場にまわるようになりました。
こうしたアカデミズム系の学外業務以外にも、なんだかよくわからない「有識者」扱いゆえの仕事もあります。
大学教員という肩書は、もうありがたみは薄れたと思うのですが、さほどギャラを払わずとも呼べる上に、「なぜその人を呼ぶのか」のコンセンサスがつくりやすい職業なのでしょう。オンブンズマン、外部評価委員、審議委員などなど、お目付け役・ご意見番的なポジションに起用されることが多いです。
民放局の番組審議委員は、もうかなり長くやっています。他大学の外部評価委員という仕事は、今年から。ひとさまのこと、とやかく言っている場合ではないのですが。
それから、自身が大学時代に奨学金をもらっていた公益法人から、奨学生の選考・面接委員に呼ばれたり、奨学生たちの論文コンクールの審査員を委嘱されたり。わりと理系の大学院生を支援することの多い奨学財団なので、面接の場では、量子コンピュータやら「○○を有する××と△△酸を用いた□□触媒による☆☆合成」についての説明を聞いたりします。皆目わかりません。でも、理系の院生は、一生懸命でなんかカワイイです。
その他、近隣の地方公共団体などから、「困った時はとりあえず大学の先生」的な依頼が来ることも多いです。企業からのお知恵拝借的なお仕事もあったりしますが、知恵を出せない時はしんどい思いをします。ご期待にそえなかった時の居たたまれなさには、なかなか慣れることができません。こうしたメンタル面の弱さも、広告業界向きではなかったのでしょう。
その他、講演仕事もろもろは、研究の還元やら社会教育やら校務の一部(高校への出前講義など)といった側面はありつつも、やはりエキストラな業務です。こちらもなんとかご期待に応えたいとは思うのですが、うまくいくことばかりではありません。高校に行くにしても、生徒の前だけではなく、教員の集いみたいな場で話したこともあれば、校長先生たちの会合に呼ばれたこともありました。カルチャースクール的なところに行くこともあります。
最近やたらと「高大連携!」といわれます。勤めている大学の付属校・併設校などはもちろんですが、スーパー・グローバル・ユニバーシティの教員として、スーパー・グローバル・ハイスクールとの教育連携のために出向いたりもします。文科省のおおせのとおり、私たちは動きます。スーパー・グローバル。口が裂けても「(笑)」などとは申しません。
英語で授業を…というのは、さすがにお断りしましたが、最近、高校生たちの課題研究発表会にアドバイザー的におじゃましました。今どきの高校生、皆パワポ上手です。すべてのグループというわけではないですが、英語でプレゼンテーションする生徒もいます。そのプレゼンに、大学教員側が日本語でコメントするのは、けっこうマヌケです。傍聴している父兄が、英語で質問したりするので、余計になんだかなぁという気分になります。でも、文科省の言うことは、絶対です。グローバル人材の育成! 国家戦略!
とまあ、大学教員は、いろいろ使い勝手がいいみたいです。でも、声がかかる人もいればかからない人もいるのだから、がんばらないと。まだわが家の子どもたちは小さいので、仕事どんどん受けて、定年の日までサバイバル、サバイバル。
コピーライターの自嘲の一つに、「置屋の芸者みたいなものだ」があると思いますが、大学教員も同様です。今なんとか教員やれているのも、コピーライター経験のおかげかも。初職がコピーライターだったことに、感謝しています。東京の口座、キープに努めます。
長々とおじゃましました。矢野貴寿さんにバトン回します。よろしくお願いします。
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