リレーコラムについて

ッコリー

角田誠

「次は、大門、だいもん」という車内アナウンスを聞いて、

「ダイモンとガーファンクル」と思いついたのは、私の上司だ。

彼はロケ地の打ち合わせ中、南米の地図を前に、

「ボリビア・ニュートン・ジョン」とも呟き、周囲をあっと言わせた。

間もなく彼は「殿堂」を設立し、エントリーされるアイデアから

優れたものだけに「殿堂入り」の称号を与え始めた。

主に企画会議で煮詰まったスタッフから、

多くが提案させるのだが、殿堂の敷き居はそう低くはない。

そんな中、あるアートディレクターがするりと受賞する。

作品は「パジャマ寛平」であった。

言葉の専門職達が焦り、力むバットが空を切った。

かつて糸井重里さんが、「夜中の学校」で

「言葉は、言葉の素でできている」と語られていた。

例えば「鳳蘭」という言葉には、

「オオトリ」成分なる言葉の「素」があり、

同質の成分は「鳳啓介」にも含有している。

それに気付くと「鳳蘭」と聞いただけで

「ポテチン」とか「え〜」が重なってくるという論理である。

殿堂入りには、このロジックが助けになりそうであった。

「ダイモン」と「サイモン」。「イモン」成分。

「オリビア」と「ボリビア」。「リビア」成分。

「ハザマ」と「パジャマ」。ここで、最後の「マ」に至る

イントネーションが重要であることにも気付く。

こうした言葉の中に潜伏する次元の違うマグマにも

触れると、笑いの爆発力は数段増すようだ。

かの上司と中華料理店で遅い夕食を取っている時だった。

目の前の炒めものに、僕はマグニチュードを感じた。

「ブロッコリーひょうたん島」

その場で殿堂入りを果たし、乾杯の紹興酒を追加した。

数年経った先日のことである。

ブロッコリーを森の樹々に見立て、

その木陰に「金のキユーピー」が佇む中吊りを見た。

不変の清潔さをもった広告に触れながらも、頭の中で

「な〜みをチャプチャプかきわけて〜♪」と歌うものがいる。

「ッコリー」成分が、映像と起こすChemistry。

恐るべし、言葉の素。僕の言葉の旅は、まだ、半ばだ‥‥

この話の途中で「ああダジャレですね」という輩とは

僕は親しくはなれない。

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