リレーコラムについて

タグボートさんのかっこよさ。

児島令子

はじめてタグボートと仕事をしたのは2001年。
タグボート設立2年目の夏でした。

ある日、仕事場のFAXがカタカタ…。
そこには私がいままで見たこともない、
世にも恐ろしい膨大な文字数のラフが出現。

直後、岡CD、川口ADから電話。
スターバックスの上場広告のコピーを頼むよと。
その新聞広告を読めば、スタバとは何かが
すべてわかるようなものにしてねと。

資料が送付され、以後彼らからは連絡無し。
ボールは、こちらに投げられたのです。
彼らにはやりたい上場広告のイメージがある。
あとは、私がそれを書くだけ。

タグボートはかっこいい。
これは広告界の共通認識でしょう。
外見も、制作物も、ワークスタイルも、思想も。

私はこのかっこよさと、どう対峙すればいいのだろう?
かっこよさに、あえて泥臭さで答える手もあるよね。
こんなのどう?あんなのどう?と、
ちょこちょこボールを投げ返して進めるやり方。

だけど、そうしてしまうと、
広告の気のバランスが崩れる。
かっこよさを泥臭さで中和してしまわず、
かっこよさには、かっこよさで答えて、
かっこよさの二乗の成果を狙う方が…
(なに言ってるか、よくわからんよ。)

よし、私、決めた。
途中で相談しないよ。皆まで言うなだよ。
ひとりで考えるもん。プロだもん。
そもそもコピーライティングとは孤独な作業。
その孤独の井戸の深淵にこそ……
(話、はやく進めて。)

私は一週間こもって、ああだこうだと苦しみもがき、
ついに3000文字以上のコピーを書きあげたのです!

プレゼンの場で3000文字のコピーを朗読する岡CD。
(なんで岡さん?書いたの私よ。ま、いいか。)

読み終わると、クライアントは握手を求め、
スタバ創立者ハワード・シュルツ氏は、
遠くシカゴで静かにうなずいた…気がした。
うまくいった!
私もかっこいいチームに仲間入り?

以後、タグボートとのつきあいが始まりました。
それはつまり、かっこいいと対峙する歴史でした。

(例1)
とある競合プレゼン。タグボートと参加。
プレ終了後、クライアントが名刺交換しようと言う。
岡さん、
「それはやめましょう」
一同、えっ?
「次回、僕らがプレゼンに勝って、
またここに来たときでいいじゃないですか」

私はこのかっこよさに、どう加担すればいいんだろう。
彼らを真似て、髪をかきあげ、口角を上げ、
颯爽と席を立つしかないのでした。

(例2)
とあるレギュラージョブ。
タグボートから頼まれてつづけていた仕事。

そろそろ次の広告作る頃だよなあ、
スケジュールをタグボートに確認しようっと。
川口さん、
「ああ。アレ、降りたよ」
私、えっ?
「向こうと考え方が合わないから、降りた。
ごめん、言ってなかった?」

私はこのかっこよさを、どう飲み込めばいいんだろう。
「オッケー!次また楽しい仕事やろーね!」
と未練を隠し、笑うしかないのでした。

(その3)
とある鉄道会社のシニア向け旅の広告。
タグボートからキャッチコピーの依頼。

コピー案を持って、待ち合わせのホテルオークラへ。
タグボート、ロビーでコピー案をさーっと見る。

川口さん、「これ、いいね」
岡さん、「こっち、よくない?」
川口さん、「ああ、そっちもあるな」
岡さん、「こんなふうに言われたら嬉しくない?」
川口さん、「うん嬉しい。それだな」

はい、コピー決定。以上5分ほど。

岡さん、「飯食おうよ。児島さん、久兵衛どう?」
(え?打ち合わせ、もう終わりかよ!!)
私、「そ、そうね。今日は中華の気分かなあ…」

私はこのかっこよさと、どう同調すればいいんだろう。
大阪から往復5時間かけて来る意味ないじゃん。
メールでいいじゃん。と思いつつ、
北京ダックをわしわし食べるしかないのでした。

ちなみに決定コピーは、「大人は、とっても長いから。」
いいセレクトしてくれるじゃん。

(考察)
「かっこいいことは、かっこわるい」ともいいますが、
それは足し算のかっこよさのことでしょう。
タグボートのかっこよさとは、
しないことのかっこよさ。引き算のかっこよさ。
だから、「かっこいいことは、かっこいい」のです。

これだけ誉めたんだから、
またおいしい店連れてってね、タグボートさん♪

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わーい、終わった~。大変だった〜。
え?読む方も長くて大変だったって?
毎日読んでくれたみなさん、ありがとうね!

さて、次に私がバトンを渡すのは、
今年TCC賞をとった、照井晶博さんですよ!
照井さんはコピーもうまいが、年賀状もうまい!
今年いただいた年賀状の文章。
これがもう、コピー年鑑掲載レベルなんです。
もし年賀状部門があれば部門賞でしょう。
そんな照井さんのコラム、楽しみだなあ。 

※画像は3000文字のイメージ実感用。

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