3日目のカレー
「もし自分がカレー屋を開いたらどんなカレーで勝負するか?」
という空想にふけっていたとき、
思いついたのが「時系列で提供するカレー」だ。
例えば、紹興酒などは
「3年物」「10年物」「20年物」などで味も値段も変わる。
ならばカレーも、
「1日目のカレー」「2日目のカレー」「3日目のカレー」
と時系列で提供してみてはどうか?
1日目のカレー:500円、2日目のカレー:600円、3日目のカレー:700円。
以前、藤井健太郎(「水曜日のダウンタウン」等のプロデューサー)が
「技術も予算もない番組が、かけられるのは時間だけ」
と言っていたことを思い出し、(言ってないかもしれない)
カレー素人で、元手もない私ができることはこれしかないと考えた。
昔よく通っていたスナックのママが高齢化によってお店をたたんだのを聞き、
その跡地で水木金と営業するところまで計画は進んだ。
ただ、自動車の免許を持っていないので、
店の仕入れを毎日自転車でやるのはしんどくないか?
というところで空想はとん挫した。
そんなあてもないカレー屋計画を思い出し、
屋号を決めるとき、なんの迷いもなく
「3日目のカレー」にした。
屋号の由来を訪ねられることはほとんどない。
みなさん
「よく煮込んでる案、ってことですかね」
などといい感じに解釈してくださる。
しかし、そこまでの深い意味はない。
深い意味のない名前がつけたかった。
対クライアントにはコピーを100案考えることもザラだが、
対自分には1案でいい。
1案プレで臨んだネーミングプレゼン。
自分はその場で即決してくれ、
名刺の発注も進んだ。
ところが、直前になって
自分が「類似チェックは済みましたか?」と言いだした。
「まあ、たぶんないと思いますけど」と言いながらググってみたら、
「常温で寝かせたらアウト!」「3日目のカレーはやばい」「食中毒の危険」
という文字が躍っている。
屋号が腐っているのはさすがにまずいのではないか?
「3日目のカレーで行きましょう」
リスクを説明したうえで、自分からGOがでた。
「まあ、神田に『100時間カレー』とかありますし、衛生面は大丈夫でしょう」
たしかに。
えっ、でも100時間 > 24×3=72時間で、
3日目のカレー、負けてない?
と別の心配が頭をもたげたが、それは黙っておくことにした。
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