してはいけないコピーライター勉強法① 自作自演ラブレター
銭谷侑
中学生のオレは、
とにかくラブレターを書いていた。
女性にじゃない。オレ自身にだ。
好きな女性になりきって、オレ宛に書いていた。
そう、オレはとにかくモテたかったのだ。
少しでもモテるために、
テストではずっと学年一位をとりつづけ、
やりたくもないサッカー部にも入った。
でも、残念ながらモテなかった。
それどころか、まともに女性と
会話すらもできなかった。
(まぁいまもあまり変わらないが)
そんな中学生のオレが、
苦悩のすえあみ出したソリューションが、
「自分で自分にラブレターを書く」だった。
しかしここで焦ってはいけない。
絶対に、いきなりラブレターを書くなんていう
間違いを犯してはいけない。
まずは、好きなコの文字採集からだ。
オレは、クラスの日直ノートから、
好きなコの文字を、一つ一つ模写した。
そして心も、文字も、好きな女のコになりきって、
自分自身にラブレターを書く。
(よく女子っぽい字を書くねと言われるが、
確実にこのときの後遺症だ。)
オレは、完全にはまった。
好きなコにじゃない。ラブレターを書くことに。
最初は好きな女のコからはじまった
自作自演ラブレターだが、
いつしかクラスの全員分からのラブレターを書いていた。
オレの嫌いなギャルや、なぜか男にもなりきって、
ラブレターを書いた。
数多く書いたラブレターの中でも、
いちばん心に残っているラブレターは、
教育実習にきていた女子大生からのもの。
彼女が、夏休みに北海道に遊びにいったことを
女性生徒と話しているのを盗み聞きし、
あるアイデアを思いついた。
じつは偶然にも、オレの祖父母の実家が北海道だったのだ。
オレは祖父母の家に帰ったさい、
北海道のポストからラブレターを投函した。
(そのとき、オレは仙台に住んでいた)
自分で書いたラブレターが自分の手元を離れ、
その到着をいまかいまかと待つ
あのときの高揚感を、オレは一生忘れない。
ただ、はっきり言っておこう。
この経験は、コピーライターになるのに
まったく役にたたない。
むしろ、とてつもない癖字になるから
やめたほうがいい。
ただし、一つだけ良かったこともある。
それは、自分のいいところを見つけるより、
企業や商品のいいところを見つけるほうが
気持ちが楽だということだ。
いまコピーライターになって
さまざまな業種のクライアントを担当しているが、
どんな業種でもクライアントにしっかり向き合えば、
心から好きだと思えるところが見つかる。
自分にラブレターを書くより、
企業のコピーを書くほうが、だんぜんカンタンなのだ。
だって、本当に好きなところが見つかるから。
ありがとう。中学生のときのオレ。
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