「お前、このキャットフード食ってみたのか」
目はマジでした。
明らかに怒ってました。
コピーライター1年目。キャットフードの仕事の打ち合わせのこと。
僕の書いていったコピーを見て
CDのAさん(コピーライター出身)が言ったんです。
「お前、このキャットフード食ってみたのか」と。
いやいやいや。
だってキャットフードですよ? 動揺する僕。
「・・・食べてません」としどろもどろ。
めちゃくちゃ怒られました。
商品を実際に食べてみないで食品のコピーが書けるか!と。
ほんとビビったなあ、あの時は。
俺は食ったと当然のように言うんですよ。
ビビった、というか軽くショックでした。
コピーライターってそこまでやるのと。
でも今思うに。
きっと見るに堪えなかったんだと思うんですよね。僕のコピーが。
オリエンシートのコピペみたいで。
たとえば、カリカリとした食感が商品特長だと
オリエンシートにあったとして。
「カリカリした食感に猫ちゃん大喜び」とか
そのままボディコピーでなぞるようなこと。
これをたとえば、
「カリッと一口で砕けたあと、
クチの中でほろほろっと気持ちよくくずれる。
そんな食感、私たちだってクセになりますよね。
猫ちゃんだって同じです」
とか書いたら、伝わり方が少しは変わりますよね。
(*すみません、内容はいいかげんです)
そういう、全身の感覚を総動員して
読む人に何かを気づかせたい、という努力をお前はしてるのかと。
そのためにできるトライを、全部やりつくしたのかと。
Aさんは僕の胸ぐらをつかんで
言いたかったんじゃないかなと、今は思います。
実際に食べたかどうかはひとつの喩えで。
僕たちのまわりには「それっぽいフレーズ」があふれています。
それをつぎはぎしただけでも、何か書いたような気になります。
僕もしょっちゅうなります。
今日もなりました。
それっぽいものって
それっぽく評価されるから、
それっぽく仕事を終わらせることもできてしまうかもしれない。
でも、そんなとき、
いつも脳裏にAさんが出てきて言うんです。
20年前と同じ声で。
で、斉藤。
お前キャットフード食ってみたんか。このコピーでいいんか、と。
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広告界の華麗なるマジシャン・安藤宏治さんから
バトンを引き継いだ斉藤賢司です。
*安藤さんは手品を得意とし、
その公序良俗に反する内容ゆえにかたく封印されてしまった
「◯◯◯◯マジック」(あえて伏字)という一芸を持つ
広告界随一(?)のマジシャンです。
安藤さん、いつか封印を解いてください!
(変なフリをしたお返しです)
読む人を具体的にイメージしないと書きづらいな、と思い、
20代のコピーライターの方を想定することにしました。
おはずかしい話ですが、
僕は強い志なくコピーライターになった人間で。
なんとなく広告会社(博報堂)に入り、
配属されたからというだけの理由でこの仕事を始めました。
そんな僕が20年以上もコピーライターを続け、
結果的に独立までし、
一人前のような顔をして仕事できるようになったのは、
ひとえに環境に恵まれていたからです。
とりたてて資質もない若造をなんとか育てようとしてくれる
人が僕の古巣にはたくさんいました。
そして僕が受け取ったものは、多くの場合、コトバでした。
この仕事を始めて間もない人の刺激に少しでもなればと思い、
そのコトバの一部を紹介します。
誰のコトバかは・・・書きたいのですがやめておきます。
自分がそんなことを言ったと書いてほしくない方も
いらっしゃると思うので。
お名前をタイトルに並べてアクセス数を稼ぐという
よこしまなことも一瞬考えたんですけどね(笑)。
ただ、少なくとも僕なんかより
はるかに活躍されてる先輩たちであることはお約束します。
では一週間(出遅れましたが)よろしくお願いします。
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