もうひとりの神様のこと。
逢引しようよ。数年前、男の人にそう誘われました。
うちの会社の細谷さんです。
週末。マストロヤンニの映画を観に、渋谷のル・シネマへ。
観賞後、細谷さんが「ピロシキ食べたいな」となり、
行きつけというロシア料理屋に行きました。
それが、地獄の始まりでした。
テーブルに着くと、当前のように置かれるウォッカのボトル。
それぞれのショットグラスになみなみ注がれました。
飲む。注ぐ。飲む。注ぐ。飲む。注ぐ。(ここまでで20分くらい)
細谷さんのペースについていき、途中で気づきました。
「これ、あかんやつや」と。どうしようと焦りながら、
ふと自分の鞄を見ると、ほとんど飲み終えたペットボトルが。
……!!!
僕は閃きました。『ウォッカをペットボトルに大移動!』作戦を。
そして、冷静に大胆に。作戦を遂行したのです。
なんとか、ウォッカのボトルは空になりました。
僕は大きな達成感に浸っていました。そこへ、細谷さんが上機嫌に一言。
「山根くん、強いねー。もう1本いこう!」
デジャブかと思うほど、新品のボトルが目の前へ。
ペットボトルはもういっぱいでした。
その後の記憶は曖昧です。
ただ、断片的な記憶の中ではっきり覚えていることがひとつ。
ふらふらになって店を後にし、モヤイ像の辺りで
二人で煙草を吸っていた時のこと。酔っ払っていた僕は、ついぽろっと、
「人多いですねー。こんなに人いて、みんな広告とか見てるんですかね」
なんてことを口にしました。すると、細谷さんが笑いながら、
「バカだねぇー!広告見るときはさ、一人なんだよ。
みんな結局は一人なの。その一人に向かって作るんでしょうよ」
その言葉だけは、なぜかとてもよく覚えています。