記憶が飛ぶ
記憶が飛ぶ。といえば
数年前から、母がアルツハイマーを患っている。
年の離れた母の姉が
以前からアルツハイマー型認知症だったので
なんとなく覚悟はしていた。
日付が覚えられないから
カレンダーをめくらなくなる。
ケータイやテレビのリモコンなど、
いつも使っていた機械の使い方がわからなくなる。
段取りや、分量の加減がわからなくなるから
味がすごく濃くなったり、しょっぱくなったり
料理の味が変わる。
専門家から聞いていた
アルツハイマー型認知症の兆候すべてを見事にクリア。
お医者様の検査も、月を追うごとに成績が下がって、
薬を飲んでも症状はぐんぐん進んでいった。
症状が進むにつれ、「理屈」や「我慢」が
母の中から少しずつ消えていった。
好き。嫌い。気持ちいい。気持ち悪い。
やさしい。怖い。寂しい。嬉しい。
そんな気持ちにどんどん素直になっていく。
夕方、外が暗くなると寂しがって泣くし
テレビドラマの暴力シーンを見ると本気で怖がる。
そして、会いに行けば、
本当に嬉しそうな顔をして喜ぶのだ。
たかが私に会って、こんなに嬉しそうな顔をする人が
この世にいたのか。と、しみじみするレベルだ。
この先、症状が進めば
私の顔や存在がわからなくなるときが
来るかもしれない。
でも、いまこれほど私(に限らず、姉や弟もだが)を
大切に思ってくれる人がいる、という事実は
ずっと、私(たち)を支えてくれるだろう。
そんな母の話を、明日も
書こうと思います。