リレーコラムについて

「でオメェよ、ラジオCMを作ってみてどうだったんだよ」

五明拓弥

どうなるかと思いましたがやりはじめてみるとコントの作り方と全く同じでした。
僕ら芸人は設定を自分で考えます。
この設定を考える時間がしんどいので、最初から大まかな設定が決まっているCM作成はとてもありがたかったです。

コントは人によって作り方があると思いますが基本的には最初に設定を考えてその枠内で作っていく人が多いかと思います。

僕もその方法でポツポツとラジオCMを作ってたのですが、ある程度やると行き詰まってきます。
そんな時に役立ったのが今まで自分達のコントでやらなかったボツネタや、思いついた断片的な言葉を書いたネタ帳でした。見返してCMの設定と照らし合わせると結構使えるネタがあったのです。

その中のボツネタで『冬将軍』というコントがありました。
・秋がそろそろ終わろうとしてるのに冬将軍が全然起きない。
・家来が必死に起こすが布団から出てこない。
・法螺貝で起こす。
・駄々こねる冬将軍を無理矢理起こして甲冑を着さす。
・兜の前立が「冬」。
・冬将軍の言動寒い。人間性も寒い。

くらいのザックリした内容しか書いてなかったのですが、このコントをやろうと思って裏方さんに相談したら「甲冑?発注したらいくらかかるの?」と言われ封印しました。

ネタ帳を見返して「冬将軍」を擬人化したのはなんか使えそうだなと思って、考えたのがこんなCMです。

『冬将軍』

天気予報M
天気予報士「明日は関東地方で冬将軍が大暴れのもようです」

SE 馬の走る音
SE 法螺貝
SE 刀振り回す音

冬将軍「うりゃ!うりゃ!うりゃー!!それそれそれうるりゃゃーー!!」

※冬将軍の声F.O

家のドア開ける音

冬将軍「はぁ、はぁ、はぁ…ただいまー」

妻「お疲れさま。お風呂沸かしといたわよ」

冬将軍「(風呂の中の感じ)ふうぅぅ」

ナレ「冬将軍の冷えた身体も温める、東京ガス」

ゴミになりかけてたボツネタも無事成仏してくれて親としては嬉しい限りです。

オリエンからコンペまであっという間に2週間が経ち、コンペ当日、再び東京ガスさんの本社へ。
この時、コンペがどのようなものか、今から何が行われるのか全く解っていません。
広い会議室に通されました。そこには10人くらいの仕事ができそうな方々、オリエンでお会いした東京ガスの皆様がいました。
分厚い資料が1人1冊目の前、机の上に置いてあります。チラッとめくると台本でした。

『今から何がはじまるんだ?』

澤本さんと連絡を取り合っていた遠山ならきっと知ってるに違いないと思い、遠山の耳元で囁きました。

「いまから何やんの?」

「わからない」と遠山。

「…か、書いてきた台本さ、今から、よ、読むのかな?」

「わからない」と遠山。

こいつはもうダメだ。
遠山は額に脂汗を滲ませ、目は虚ろでした。僕は一度冷静になろうと外を見ました。会議室は高層階にあって見晴らしがとてもいいのです。
こいつもダメだ。
窓に反射する自分も遠山と同じ顔をしてました。

戦々恐々。

東京ガスさんから今日の説明がありコンペがスタートです。
予想は的中しました。作ってきた人が設定を説明して台本を読んでいきます。
ここから覚えてるのはとにかくずっと頭が痛かったこと。偏頭痛なんて普段起こさないのにずっと痛かった。緊張と慣れない環境が引き起こしたのでしょう。

カピカピになって家に到着。バファリン飲んですぐ寝ました。
CM作るのは楽しかったけども、コンペは頭が痛かった。

次回は「そんでオメェよ、コンペの結果どうだったんだよ」を更新予定です。

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