リレーコラムについて

クマの話

塚田由佳

先日、民家の主人が家に帰ったら、
あらびっくり、熊が勝手に上がり込んで
リンゴを食いまくっていた、
という報道があった。
主人は引き戸をひいて、一目散に助けを呼びにいき、
なんとか惨事はまぬがれたとのことで、
とりあえずこの話は一件落着。

ところで、この話題をワイドショーとかで見た私は、
吹き出さずにはいられなかった。
もちろん、当事者は相当恐かったに違いない。
でもそのストーリーから想像する絵が
あまりにテレビCFのコンテっぽく(というかアニメっぽく)
コミカルすぎて。
効果音まで、入ってしまいそうなほどだ。

実際熊に限らず、ほとんどの動物は、実物よりかわいく
キャラクター化されて、私たちの頭の中に刷り込まれているが
熊ほど、実物の凶暴さをぬぐい去って
ラブリーにキャラクター化されてる動物も少ないだろう。

ディズニーをはじめ、アニメや漫画に出てくる熊は、
だいたいのんびりしていて
ポヨヨンとした憎めないキャラが多いし、
テディベアなど、ぬいぐるみの中のぬいぐるみ
といった感じで、世界中で赤ちゃんが、お母さんの次に
微笑みかけちゃう相手だったりする。
花田家に嫁いだ美恵子さんが、結婚記者会見の時に言った
若乃花についてのコメントは
「熊のぬいぐるみみたいな人」だった。
一方白クマは白クマで、「勝手にシロクマ」と言う漫画で
家族ぐるみでボケ役ヒーローに抜擢されたかと思えば
CFの中でエアコンには当たるわ、
ウイスキーは飲むわ、最近じゃ、青汁まで飲んでいる。
人間に非常に馴染みやすいキャラを被って。
どう考えても、恐怖感は希薄だ。

結局、生まれてからずーっと「熊」というイキモノは
「ラブリーなぬいぐるみ」という風にしかイメージできてない
人も多いはずである(特に女の子)。

なのに、なのに、事実は
人は熊に食われちゃうのである。
なんか、これじゃ、狼よりタチ悪いじゃない。
しかも、それは
人間が勝手に熊をかわいいやつだと思いこんだわけで、
熊のせいじゃないのだ。
「騙すなら、最後まで騙してっ!」といいたいところだが、
勝手にこっちがイメージつくって騙されてるわけだから、
責めるわけにはいかない。

世の中には実際、こういう「人」っているし、
こういう「広告(商品)」ってのもあるだろうなあ。

とりあえず、みなさん。
熊にあったら、死んだふりをするのはやめましょう。
そのまま食われちゃうらしいからね。

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