リレーコラムについて

平和ボケの怖さ

大久保日向子

叫び声で、目が覚めました。

もう10年近く前のことです。

普段なら、どんなに起こされても反応しない私。
その時ばかりは嫌な予感で飛び起きました。
深夜2時ごろでした。

寝ぼけた頭をこづきながら
おそるおそる一階に降りてみると、
そこには涙で顔がぐしゃぐしゃになった姉がいました。

とぎれとぎれの声でいきさつを話してくれました。

めずらしく目が覚めて、お茶でも飲もうと階段を降りたら
…真っ暗の廊下に、見知らぬ男が立っていたそうです。

その先の洗面所では、不審者の存在など想像もしない母が
歯磨きをしていました。

とっさに、
「どろぼう、どろぼう!」
と叫んだ姉。
男は走って玄関から逃げていったということです。

のどかな田舎で暮らしていることもあって、
我が家の防犯意識は低かったのかもしれません。
あまり戸締りに神経質になることはなく、
その日もドアの鍵は開けっぱなしになっていました。

幸い、盗まれたものもなく、
家族全員無事だったのですが。
私は家に入られたことより、
咄嗟に声を出した姉の対応に衝撃を受けました。

刃物を持っているかもしれない。
急に襲い掛かられるかもしれない。

自分の身の危険をかえりみず
大声を出して撃退することなんて、私にできるだろうか。
もし遭遇したのが私だったら、家族はどうなっていただろう…。

もちろん、考える余裕がなかったせいかもしれませんが、
姉の一声で助かったことには違いありません。

ショックでなかなか泣きやまない姉の背中をさすりながら、
お姉ちゃんには一生かなわないな
と思ったのでした。

そんな姉も、もうすぐ結婚します。

あの時の借り、そろそろ返さないと。

一週間、拙いコラムにお付き合い頂き
ありがとうございました。

次は、博報堂の大石将平さんにバトンを渡します。
キューティクルがまぶしい、とても物腰やわらかな方です。

大石さん、よろしくお願いします!

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