リレーコラムについて

ピコ太郎が恐ろしい

尾上永晃

広く告げると書いて広告。
なので、広告には
「広げる」と「告げる」といった使命が内包されています。
特にデジタル広告においては、この「広げる」が求められます。
それがバズとか拡散とか言うものです。
何でかというと、マス広告は「広げる」部分は
そのメディアで何回流すかとか、
どれだけの発行部数の媒体で見せる、
といったメディアプランニングで担保されますが、
デジタル広告には基本的にそういった枠が無いので
「広げる」ことを考えないと、そもそも見られないためです。
逆に、「告げる」技に関しては
長年そこに注力してきたマス広告ゆえの圧倒的強さがあります。
どちらもそれぞれの面白さを持っています。

この「広げる」「告げる」で広告の歴史を見返してみると、
新聞というマスメディアが登場する前の広告は
「広げる」技の宝庫です。
平賀源内の土用の丑の日しかり、仁丹による浅草仁丹塔しかり。
見た人が口づてに人に告げていくような構造になっています。
それから、新聞やTVが出て来て、
「告げる」技が磨かれていったように見えます。
登場してから何十年もたったメディアで
未だ新しい表現が出続けているあたり恐ろしいことです。
もちろんその上で「広げる」マス広告もあって、
そういった広告は未だ人の記憶に残っているんじゃないでしょうか。

そして、デジタル広告が出て来たことで
今度は一周回って「広げる」が重視されています。
実際は「告げる」マス広告とパラレルで存在すべきなんですが、
どこもかしこもバズバズバズバズ…。
「広げる」視点のみで作られたマス広告は、
「告げる」ためのメディアにおいて鬱陶しく見えるため
そこは分けて考える必要があるはずなのに。
(毎回驚きの結末があるCMを5回も見たくないって話です)

さておき、
マス以前の時代との違いとして、
マス経験者がデジタルをやったり、
デジタル経験者がマスをやるようになることで、
「広げる」と「告げる」が良い案配で
ミックスされ始めているのは
面白い状況なんじゃないかなと思います。

と、そこにきて恐るべきニュースを見ました。
「総務省がテレビとネットの同時配信を解禁する方針」
とのニュースです。
ブロードバンド化やスマホの普及に合わせて
テレビをワンセグとかじゃなくて
ネットで普通に見られるようにしようという話です。
実際は、著作権がらみの問題とかで難航しそうですし、
テレビという空間を作るメディアが無くなるとは思えませんが、
そういう方向に舵を切ろうとしているという事実はあります。
少なからず未来はそうなっていくよ、という流れなわけです。

こうなると、何が起きるかを極端に考えてみると、
まずCMがデジタル広告ばりに、
より厳密に効果測定されるようになりそうです。
このCMでテレビからユーザーが離れた、
とかが分かるはずなんで、
TV局としてはそういうCMを流したくないでしょうし、
広告主としては改善を求めてくるはず。
一回納品して終わりにはならず、
効果が上がるまで放映してから何度も修正が発生するはずです。
10パターンくらい納品して、効果的なものを残して行く。
ときには、コピーを入れ替える。
そんな運用型CMっぽくなったりして。これはきつい。
他には、YouTubeの動画広告みたいに
15秒とか30秒といったルールが無くなりそうです。
6秒でも2分でも効果的なら良しと。
そして、CMのライバルはCMだけだったのが
世の中すべてのコンテンツがライバルに。
強制視聴の枠は減って、
話題になるCMが求められる量が増えるんじゃないでしょうか。

それはテレビ番組側も同じで
話題になる番組作りに比重が置かれるのではと。
というか、もう、そうなってる気もします。
最近の番組でいうと、水曜日のダウンタウンとかは
調査結果をエンターテイメントにするという視点で
調査PR型広告的に話題になっていますし、
逃げ恥の恋ダンスなどは、
ダンスと番宣をくっつけたのを
アップしては消しを毎週繰り返し、
火曜10時枠における過去最高視聴率記録を出しています。
(今週になって藤井隆バージョンを流すあたりが超うまい。)
なにげに両方TBSですね。回し者ではありません。

話を戻しますと、そんなこんなで
「広げる」「告げる」の融合が
もっと大事になっていくのだろう
と思っています。
デジタルはマス的になり、
マスはデジタル的になる。
結局的に、メディア特性に合わせて、
告げたいことをきちんと告げて広げてもらう。
そんな「広告」という漢字をそのまま表すようなものが
これから増えて行くのかなと。
大変そうですが面白そうですね。

なんで長々とこんなことを書いたかと言うと、
ピコ太郎が10万円で6時間で作った動画で
世界を席巻しちゃったからです。
ピカソ風に言うと43年と6時間ですが。
こんなんがあと数回続くと、
広告って何なんだ…って
レゾンデートルがが崩壊しそうで。

最近感じてることをわーっと書かせて頂いたら
ものすごく長くなってしまいました。
マクルーハンとか立派なものを読んだことがないので
全体的に違うかもしれません。
ご意見ありましたらよろしくお願いします。
パラダイムシフトが起きる麺についてもよろしくお願いします。
(高田馬場に博多の麺を出す店が爆誕したという情報を得ました)

そして次にバトンを渡しますのは
鼻が立派なことで有名な同期の秋田くんです。
バトン長いこと持っててすいませんでした。

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